繋ぎ、繋ぐ物語
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綱元が成実の執務室へと訪れると、成実は部屋を駆け回り書類をかき集め終わった頃だった。
「・・・・成実、何をやっていたのですか?」
綱元が見たのはぐちゃぐちゃに執務机の上に置かれた書類と畳に転がっている成実の姿。
なんとなく状況が読めた綱元は呆れたように訪ねたのだった。
「いやー、風はすごいねぇ」
ハハハッと渇いた笑みをこぼした成実はよっこらせっとおじいさんのような声を出して起き上がった。
「まったく。あなたって人はどうして、」
綱元は言葉を区切って執務机に近づいた。
「学習力がないんですか」
成実に見せつけるように執務机の横に落ちていた文鎮を手に持った。
「あぁー!!そんなとこにあったのか」
指でその文鎮を指し声をあげた成実。たった今その文鎮を置かなかったおかげで書類が部屋に舞ったのだ。書類の上に文鎮が置いてなかったことは成実の学習力のなさを示していた。
「あははははっ」
とりつくように笑った成実はわざとらしく大きな声でさーてとっと言った。
「綱元は休憩に来たんだろ?一緒に茶でも飲もうぜ」
そんなわざとらしい成実の言動に諦めたようにため息をつくと、綱元は廊下に程近い場所に座る成実の隣に腰を下ろした。
「竜朗(たつろう)」
綱元が一緒にお茶を飲む気があると判断した成実はとなりの部屋で待機している己の小姓を呼んだ。
「お呼びでしょうか」
隣の部屋からやって来た竜朗は廊下に腰をおろし、頭を下げた。
「俺と綱元のお茶頼んでいーか?」
ニカッと笑った成実は頭を下げ続けたままの竜朗にそう告げた。
「はい。少々お待ちください」
頭を下げたまますすすっと後ろに下がると、二人の顔を見ないように頭をあげ足音を抑えて去っていった。
090608 執筆
090610 更新 哀
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