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繋ぎ、繋ぐ物語
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 信じていたいと、思っていた。




 刺客を返り討ちにした元親は、息を整えながら、辺りを見渡した。

「全員無事か?」

「はい、兄上。この場の十人全員居ます」

 親貞が答える。

「そうか……」

 元親は、肩から、背から血を流す竜を見遣った。

「竜……城へ戻るぞ。その傷を見ねぇとな」

 竜は、緩慢に首を振った。

「いい……。暫く…このままでないと、崩れてしまいそうだ……」

 そうすれば、二度と立ち上がれなくなる身体となろう。

 息を整え、竜は長曾我部を見遣った。

「長曾我部……私が…私に、選択肢がないのは、そうでなければ、身体が保たないか
らだ」

「!……何でだ」

「知らない…。ただ、戦いに身を置き続けなければ、いずれ、私の身体は動かなくな
り、そして、私を蝕む病が、私を喰らう」

 竜の言葉に、元親は瞠目した。

 戦うしか生きられない。戦わなければ、生きられない。休むと言う事を赦されな
い。何と残酷な事か。

「長曾我部、それでも、私から戦いを遠ざけるか?」
 竜は憂いを帯びた目で見つめ、元親は息を詰めた。言うべき言葉は、決
まっている。だというのに、声が出ない。

 俺はこんなにも脆いのかと、元親は自嘲した。

 暫くの沈黙の後、竜は意を決したように口を開いた。

「言ったな……。私は生きると。だから、長曾我部。私はお前に宣戦布告をする。お
前に勝って、私は海賊に戻る!!」

「な!……竜!?」

「構えろ、長曾我部。私は海賊だ……!戦いを得られぬというのなら、私は戦いのあ
る方の道を選ぶだけだ!」

 竜は刺客から奪った短剣を、元親目掛けて突き立てた。

 元親は唇を噛んだ。竜の、先程の言葉が思い出される。


 それでも、私から戦いを遠ざけるか?


 それでもと、叫ぶ心がいた。受け止めるべきだと、言う理性があった。

「上等だぁ……。鬼が島の鬼たぁ、俺のこと!何なら、いっそ全てを喰らってや
る!!」




 誰かを求める感情が、そこにあった。




090609 更新


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