繋ぎ、繋ぐ物語
39
桜は咲き乱れ、散っていったのは約半月ほど前。その後咲いた紅梅も散り、青々とした木々に戻ってしまった。それに一抹の寂しさを感じながらも、成実はお茶を片手にぼーっと庭を眺めていた。
もう太陽は頭上を通りすぎ、少し西に傾いていた。
一通り執務を済ませた綱元は同じく執務を(悪態をつきながら)しているだろう成実のところに行こうかと腰をあげた。
しかし近づいてきた気配にどうしたものかと思案する。綱元が考えている間に、気配はこの部屋のすぐそばまで来ており、そしてその気配は成実の執務室と同じように開け放たれた襖に身を隠すように身をおとした。
「綱元様、お茶をお持ちいたしました」
これから成実のところに向かう気だった綱元は思案していたが、仕方がないと頭(かぶり)を振り、素直に感謝の意を伝えた。
「ありがとうございます。そちらに置いておいて構いませんから」
女中の用件も、綱元のその返事も成実と同じだったことはどちらも知らない。ただ、女中は綱元の意に従い、部屋の襖近くの畳に湯気が立つ湯飲み茶碗を置くと、しずしずと帰っていった。
「さて、せっかく女中さんが届けてくれたお茶を持って成実に会いに行きましょうか」
優しい目で湯飲みを見ると、お盆を両手で持って、執務机を確認して部屋を出た。
一陣の風が開け放たれた襖から部屋を通り、出口のない部屋を一周して入ってきた襖から出ていった。
一方、机の上を確認しなかった成実は入ってきた風に机の上に置き去りにしていた紙が吹きあられ、慌てていたのだった。
090604 執筆
090608 更新 哀
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