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繋ぎ、繋ぐ物語
38

「兄上―!助太刀に参りました!!」

「兄貴ーー!竜ーー!無事かぁーー?」

「あ、ちょ、松明!!」

「アニキィーーー!!!ご無事ですかぁああ!!!」

 鬨の声の正体は、元親を探しに来た親貞達だった。

「親貞!親泰!親益!……てめえら!」

 驚いて、元親は弟達の名をあげた。

 刺客に飛び掛らん勢いで姿を現した兄弟の中で最後に姿を現したのは、元親の末
弟、島親益だ。彼は去年の十四の時に元服し、元親の四国統一に貢献した勇猛な武士
である。

 親益は刀を抜くと、飛んできたクナイを弾いた。

「兄上、待って下さいよ!」

 親泰はそう叫ぶと、急いで兄の許へ駆け寄った。

「親益!遅いぜ!」

 笑いを含んだ声で叱咤する親泰に、親益は顔を膨らませた。

「兄上達が先に行っちゃうからじゃないですか!」

「それが遅ぇっつってんの!」

「親泰、いい加減にしておけ!お前が直ぐに教えてやらなかったのがいけないんだろ
う」

 親貞も、笑みを浮かべながら三男を叱った。

「それこそ兄上の仕事だろ。俺に負けたくないからって、仕事押し付けるなよ」

「何を言う。……伊達じゃ、成実が特攻隊長と呼ばれているが、長曾我部じゃ俺がそ
の役を担っているんだぞ。弟に遅れを取るわけがない」

 それを聞いて、親泰の目が光った。

「聞き捨てならんぞ、兄上!俺こそが長曾我部の特攻隊長だ!」

「ふんっ、その言葉、そっくりそのまま返すぞ!弥七郎!!」

「なにおう!」

 親貞と言い争う親泰と、話題に上った伊達成実は、年も同じ所為か、両家の中で一
番の親友同士だ。

 出会う機会自体は少ないが、会えば直ぐに意気投合する。幼い頃など、二人揃って
泥だらけになって帰ってくるのが常だった。

 そんな今も昔も元気な二人だが、先に武将として名を馳せるようになったのは成実
の方だった。それが、親泰には悔しい。

 そして、弟の心中などお見通しの兄二人が、親泰がそれをバネに切磋琢磨と己を磨
くのを、頼もしく思っている事は内緒だ。

 親益は、年少ゆえか、三つ年上の兄の心情をいまいち理解できていない様子だが。

「兄上達、いい加減にして下さいよ!」

 親益が上の二人を仲裁しようとして、一瞬の隙が出来た。

 それを狙うように、刺客の放った矢が親益に吸い込まれようとした。しかし、
竜がそれを阻む。

「あ、竜さん?有難う御座います」

 間一髪のところで助けられた親益は、暗闇の先に居る竜に礼を言った。

「……猪突猛進なお前が、身内の事で気を取られるとは珍しいものだな」

 助けた相手を一瞥し、一言言い残すと、竜は再び戦場を駆けて行った。

「おーう、言われてりゃー」

「煩いですよ!」

 親泰がからかえば、親益は真っ赤になって叫んだ。

「別に気にしてなかったのに!!気にさせるような事言わないで下さいよ!」

 末弟の叫びに、兄達の笑い声が響き渡った。




090607 更新


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