繋ぎ、繋ぐ物語
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この米沢城の主とその部下達がここを離れてから2日がたった。部下を引き連れている政宗は今頃あちらの館についた頃だろうか。成実は政宗に留守を頼まれ、米沢城の一室で執務に勤しんでいた。
「・・・はぁー。梵のやつずりぃー」
ふてくされた表情で顔見えぬ主に悪態をつくが手は動き続けている。
「成実様、お茶をお持ちいたしました」
開け放たれた襖のその向こうから女中の声がかかる。最初に感じた女の気配に彼女かと思ったが続いてかかる声と、思い出した今日は城に詰めていないことに落胆の表情を露にした。しかし成実は襖に背中を向けていたため女中はそれに気づくことはなく、返事の返ってこない成実にもう一度声をかけた。
「成実様?」
女中の声に我に返ると、ニッコリと人好きするような笑みを作り振り返った。
「ありがとう。そこに置いといてもらえる?」
目で襖近くの畳を示し、そこにお茶をお盆ごと置いた女中が出ていくのを見送った。
「・・・っ、はぁー」
溜めていた息を思いっきり吐き出す。ふるふるを頭を振って、執務に邪魔な思考を頭から追い出すようにした。しかしそれでも頭の中には昔からの幼馴染みの凪螺の姿ばかりが浮かぶ。
「一休みするかな」
気が散って集中できなくなった成実は気分転換に襖のその向こうの廊下にお茶を片手に座った。
090604 執筆
090606 更新 哀
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