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繋ぎ、繋ぐ物語
36

 答えあぐねている最中、竜は、背後の森林から矢が空を切るのを感じ取っ
た。

 この音の辿り着く先は。

「長曾我部!!」

 竜は、咄嗟に腕を振り払うと、元親の許へ飛び込んだ。

 刹那、竜の背に矢が突き刺さり、左肩にもかする。

「竜!?」

 自分の代わりに矢を受けた竜を受け止める。元親も矢を受けたが、全てか
すり傷だ。

「なろっ、向こうからか……!!」

「森の中へ入れ!!」

 例え暗がりでも格好の的だと、突き刺さった矢を抜き、竜は元親を森の中
へ入らせようとした。

 そこへ、第二射が放たれる。

「来る」

「くそがっ」

 八流を掴み、遠心力に任せて全ての矢を弾き返す。

「これでも喰らいやがれ!!…一触!」

 と、防御から間を置かずすぐさま攻撃に転じ、遠距離技を放つ。

 それが功を奏し、逃げ遅れた刺客は、薙ぎ倒された木に押し潰された。だが、まだ
沢山の刺客が潜んでいるのが分かる。

「長曾我部……」

「竜、立てるか?」

「当たり前だ。この程度の傷で支障などきたさん」

「……そうか」

「丁度良い……。なあ、長曾我部。この暗殺者を全て殺せば、近く起きる戦に参加し
ても構わないな?」

 最早月明かりが頼りの中、竜の提案に、元親は瞠目した。

「何言ってやがる!……竜!!」

 止めようとするも、次々と放たれる矢がそれを阻む。

 ふと、元親の耳に、海の方から何処か聞きなれた音が聞こえた。後ろを振り向け
ば、海から新たな刺客が現れた。

「……田舎者がぁ!!」

 四縛で動きを封じ、元親は刺客をその仲間の居るほうへ放り投げた。勿論、
竜の居る場所は避けている。

 一人なら兎も角、仲間が居る事の不利を悟ってか、何時の間にか竜が背後
に居た。

「乱戦になるまで、この陣でいく」

 元親の一瞥に気付いてか、感情の篭らない声で呟くのが聞こえた。

 その時、何処からか幾つもの鬨の声が辺りに響いた。




090605 更新


あきゅろす。
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