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繋ぎ、繋ぐ物語
35



 時は遡って弱小武家の館(いくら武家といっても弱小で、力で治めていたとしてもそれは小さな領だったといことだろうか、城ではなく武家屋敷であった)につく少し前のころ。


 「騒がしいな」


 あれからずっと隣を走っていた浪が己が思ったことと同じことを口にした。


 「えぇ、館全体がざわついてるわ。何かあったのかしら」


 近づいてく度に肌を流れていくざわついた空気。自然と桜姫は眉をひそめた。


 「見てきた方が良さそうだな」


 隣を走っていた気配がかき消えた。おそらく政宗の元へと了承をもらいにいってるのだろう。


 残った桜姫はしっかりと館を見据えながら走りを緩めた。それは浪の報告を待つためにスピードが遅くなった政宗達に合わせるためだった。






 浪の報告により、危惧していた戦の準備ではないことがわかった。しかし、肝心のざわついていた理由を掴むことは出来なく、浪は苛立たしげに表情を歪めて桜姫の元へ政宗に報告を済まして戻ってきた。


 「理由は戦じゃないとなると・・・・」


 考えを巡らすがあまりこれといって浮かぶことはない。訳のわからない敵に対して桜姫はすぅと目を細めた。


 「まったく。主の手を煩いさせて」


 口調は不機嫌を表していた。


 それを横目で見て、聞いていた浪はこっそりと心の中で溜め息を吐いた。実際吐いたものならばどんなに小さいものであろうと桜姫には丸分かりであるだろうから。


 ヒヒッーン


 馬の鳴き声に眼下の政宗達が止まったと判断した二人は足を止め、下をうかがい見た。


 そのまま突っ込むであろうと考えていた二人は驚いた表情をしていた。


 「なんだ」


 眼下にいる、先頭に立っていた政宗は門の前で土下座をしていた門兵に苛立たしげに尋ねていた。


 その声音にビクリと全身を揺らした門兵は恐る恐る口を開く。


 「この奥州を治めます、伊達政宗様とお見受けいたしまして、お願い申したいことがございます」


 震える声はだけどどもることなく言い切った。


 「Ah?・・・・なんだ、言ってみろ」


 直ぐ様切り捨てようとする政宗を制した小十郎に政宗は取り敢えずといった感じに門兵を促した。


 「それでは中で、時砂様からお聞きください」


 ギギギーと音をたてて開いた門に、土下座をしていた二人の門兵は慌ててその場から飛びず去った。


 「伊達政宗様、御来館でございます」


 政宗は中で聞くことを了承していないにも関わらず、高らかに宣言された言葉に米神をピクリとさせた。


 「政宗様、落ち着いてくだされ」


 小十郎の言葉に落ち着かせるように溜め息を吐いた政宗は足取り重く門をくぐった。






090602 執筆
090604 更新 哀


あきゅろす。
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