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繋ぎ、繋ぐ物語
34

「なあ、長曾我部……」

 竜は、哀しそうに呟いた。

「如何して、そんなに頑なに拒むんだ?」

 聞かれて、元親は竜から顔を逸らした。今の自分が、彼女を直視すること
は無理だった。

「――何故、何も言わない」

 少しずつ、一歩、また一歩と近付き、そして元親の隣まで来ると、竜は辛
そうに顔を歪めていた。元親も、何か堪えているかのようだった。

 事実、堪えていた。

「長曾我部、私はな、何もお前に頼む必要なんてなかったんだ。でも、お前の下へ
行った。……それは、戦いをやめる為じゃない、戦いを求めたから、此処へ来たん
だ」

 また、沈黙が訪れる。

 少女は、微かに呟いた。

「……生きたいんだ」

 その言葉に、元親は竜の華奢な両肩を押さえた。咄嗟の事で、竜
は抗う間もなく捕まった。

 これを即座に対処出来ないほどに、竜の身体は弱っていた。

「竜……生きたいんなら、何で、他の道を考えてくれねぇ。――如何して
も、そんなにも戦いてぇのか?」

 元親と竜は見つめ合った。

「…そうだ」

 親貞が言ったように、竜もまた、断固とした瞳で言った。

「私は、生きたい。だが、生きる為には、戦いが必要なんだ。他の道を考える考えな
いじゃない。……私には、選択肢なんてない。戦う以外、生きる道はないんだ!」

 わかって欲しいと、竜は無意識のうちに元親の手に自分のそれを添えてい
た。

 竜の必死な瞳を見つめながら、元親は腕に力が篭るのを感じた。

「……なら、選択肢のないその理由を教えてくれ」

 元親が問うた途端、竜の身体が強張るのが誰から見ても明らかだった。

「それは……」

 今度は、竜が目を逸らす番だった。



090603 更新


あきゅろす。
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