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繋ぎ、繋ぐ物語
33



 桜姫が陸奥に偵察にたった日、つまり伊達の領地内に忍び込んだ陸奥のとある忍びが桜姫に始末された日から早1ヶ月がたった。


 その間に、政宗は浪岡のもとへと文を出したり、各国にばらまいた浪とその部下たちを召集して報告を聞いたり、再び陸奥に偵察を送ったりと忙しい日々が続いていた。


 もちろん、城の女中たちや伊達の武士たちも戦に備えて鍛練やら準備やらをあわただしくしていたのだからみんながみんな忙しかったのだが。


 そんなこんなで桜姫は木々を走り陸奥の弱小武家へと向かっていた。眼下には、こんな弱い相手など政宗が相手をせずに部下にやらせればいいのだが最近暴れたりないと回りの(特に小十郎の)言うことを聞かずに戦に参加した政宗の姿があった。そのすぐ隣には小十郎の姿もある。


 城には綱元と成実が残っている。本来ならこの二人または成実だけがこの戦に参加するはずだったのだが・・・。


 「・・・・、」


 あの時のことを思いだし、無意識にでそうになった溜め息を止める。視線は眼下の政宗に留まったまま。


 横に並んできた気配。気配の持ち主は浪だった。桜姫は前を向いたまま口を開く。


 「何?」


 横を見ようとも顔には頭巾がかかってるため相手には顔が見えないのだから顔を向ける必要はない。


 「いや、今回はなんで二人も揃ってんだと思ってな」


 今回の戦は簡単ではっきり言えば成実とその部下の1割ほどですむ。それなのに政宗に小十郎、己に浪という婆裟羅を扱える人物達がこれほどまで集まっていることに疑問を持っているのは桜姫も同じだった。


 「さぁ、主が考えていることはわからない。ただ我らは主の命令を聞けばいいのだ」


 我らは道具だ。決して部下ではない。


 暗に桜姫はそう言っていた。それがわかっていた浪はゆっくりとうなずき、そうだなと返したのだった。






 実は何も言わずに攻めてきたわけではなかった。


 政宗は弱小武家に暗に忍びに俺のこと探っていただろうという内容と、領地の民はどう過ごしているかなどと尋ねる文を出していた。


 しかし返答はなく、しびれを切らした政宗が直々に来たという裏話もあった。


 そう、痺れを切らしたのだ、政宗が。
 彼は一刻もはやく弱小武家に会い、そしてどんな人物だったとしても相手を沈めてやろうなどという気持ちさえ持っていたのだ。


 なのに、今、政宗はその人物とやらに頼み事をされていた。





090601 執筆 
090602 更新 哀


あきゅろす。
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