繋ぎ、繋ぐ物語
1
森を駆ける一つの影。青い残像は森の緑と合間って目立つことはない。
1つ影。それは少女である。彼女は五日間ひたすら走っていた。原因は彼女の主の言葉がだった。それは、まるで近くの茶屋で団子を買ってこいといったお使いを頼むようなノリだった。
曰く、
「最近、やっと四国統一をしたから奴の様子を見てこい」
呼ばれて主の執務室へ向かえば、3日前に届いた同僚の報告書を片手にニヤリと笑ってそうのたもうた。
「はぁー。殿もいい加減にして欲しいな」
もごもごと口を覆っている布を動かしながら、己だけに聞こえるぐらいの小さな声音で呟いた。
彼女が所属する色を纏う彼女は、猫のように駆けていく。
奥州からから己の足で駆けてきたが、四国は海に囲まれている。そのため、農民を装い船に乗り、やっと今日四国に足をつけたのである。
四国は桜色の風景が広がっていた。丁度満開の時期だったらしい。そうなると木に身を隠すとしたらこの青い忍装束は目立ってしまう。それを考えた彼女は城下町一歩手前まで来ると、再び忍装束から農民へと変装をした。
賑わう城下町を見て回りながら城から離れた町や村は最後に忍として回ろうか等と考えた。しかしそれを打ち消すように遅くなれば煩いほど心配する主が頭に浮かんだ。
見回るのは城下町だけに諦め、とぼとぼと城に向かって歩いていると前斜め右辺りから喧騒が上がった。
目と鼻の先にある十字路まで歩き、野次馬に混じり右を伺えば少女に集る(たかる)男二人組がいた。
一瞬だけ視線を向けるつもりだったのだが、同時にその少女もこちらを見てきたため、ほんの少し見つめあった。
二人の間を桜吹雪が舞い過る。
fin
090420 執筆
090421 更新 哀
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