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繋ぎ、繋ぐ物語
32

 青紫に染まる空の下、岡豊城では親貞が床に突っ伏していた。

「弥七郎……!おまっ……」

 痛む腹を押さえ、呻く。

 その横では、親泰が気まずそうに縮こまっている。

「ご免……。兄上」

 笑われた恥ずかしさから、勢いのままに兄に鳩尾を与えてしまったのだ。親貞も、
油断していたのだろう。親泰の拳は、易々と人間の急所の一つに納まった。

「元親様ぁー!」

「アーニキィーー!!」

 突然、城の内外で、彼らの兄を探す声があちら此方から響き渡った。

「如何した!?」

 親泰が、此処にいない長兄、動けない次兄に代わって家臣に何事かと聞いた。

「あ、親泰様!」

「弥七郎様、アニキが何処にいるか知ってますかー!!」

「外へ出たのは知ってるが、場所までは知らないぞー!だいたい、何があったんだ?
兄貴の代わりに俺が聞く!」

「では、我々が直ぐそこに行きますゆえ、少々お待ち下さいませ!!」

「おう!わかった!」

 親泰は返事をすると、起き上がろうとしている親貞を手伝った。

「あー……。効いた」

「……すみません」

 親貞が完全に立ち上がれると、丁度良く家臣達が姿を現した。

「申し上げます!」

 膝を突き、家臣達は必死の体で叫んだ。

「本州より、元親様の御命を狙う輩が潜入した模様!その知らせがたった今、もたら
されてに御座います!!」

「何!?それは本当か!」

「はい!……そのような輩の潜入を許してしまったこと、誠に申し訳御座いませ
ぬ!」

 親貞と親泰は顔を見合わせると、互いに深く頷いた。

「よし、これから、兄上を探しに行く!付いてくる者は五人までだ。それ以外の者は
城の護りを固めていろ!」

「は!!」

 親貞の号令に、岡豊城は俄かに活気付いた。




090601 更新


あきゅろす。
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