繋ぎ、繋ぐ物語
31
桜姫が陸奥から帰ってきた時城がざわついていたのは、それは来(きた)る戦に人々の心が緊張していたからだ。
それに桜姫が気づいたのは陸奥から帰ってきてその日の夜のことだった。
一通りの女中の仕事を済ませ、皆(みな)と時を同じくして床についた桜姫。考えるのは夜中この城についた時に感じた違和感だった。
半日城に勤めていれば、それは戦準備などしておらず、桜姫は考えをはずしていたことになった。
「(何なんだ)」
眉を寄せて見慣れた天井を睨む。
「(城に入った時の感覚・・・)」
その感覚は幾度も感じたことがある。それはなんだろうか。
グルグルと頭をまわる感覚。思い出しそうで思い出せない。
「(・・・あぁ、)」
頭をめぐるこの城に今日存在していた人物。己の主である政宗が最初に浮かび、次々とその家臣達が浮かび、消えていく。そして数人の女中達が過ぎ去ったとき、ふとその答えがでた。
「(この城の人々の心が戦の報せに緊張していたのか)」
凪螺が考えあぐねていた疑問が解けてスッキリしたのか糸が切れたように眠りについた。
090529 執筆
090531 更新 哀
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