[携帯モード] [URL送信]

繋ぎ、繋ぐ物語
30

 夕日が完全に沈もうとしている浜辺で、一つの影が踊っていた。

 錨のような武器を振り上げては薙ぎ払い、その遠心力に任せれば綺麗な弧を描く。

 木々の陰からそれを見つけた竜には、見覚えのある動きだ。

 いつものように半日以上苛まされ続けている寒気を抑えながら―――発作が二刻で
済んだあの時、元親が側に居た時は例外だ―――竜は一歩ずつ近付いていっ
た。

「……長曾我部!」

 姿が充分に見えるところまで行くと、深く息を吸い込み、武芸に集中している元親
に声を掛けた。

 途端、声を聞きつけた元親の動きが止まった。

「竜……!?」

 かなり驚いた様子で、元親は竜を凝視した。

 それもそうだろう。今の今まで、彼女の事について考えないように武芸に集中して
いたと言うのに、その張本人が目の前に姿を現したというのだから。

「お前ぇ、一体如何して此処に?……あ、仕事、要んのか?」

 竜は頷いた。

「近々、戦が行われると感じてな。その戦に参加させてもらう為に来たんだ」

「駄目だ!」

 反射的に叫ぶ。今、最も聞きたくない言葉。

 二人の間に、暫くの沈黙が下りた。



090530 更新


あきゅろす。
無料HPエムペ!