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繋ぎ、繋ぐ物語
27



 掃除の途中で小十郎の探し物が見つかり、一度城に向かったりして、夕げの支度をする頃になっても掃除は終わることはなかった。


 「掃除は明日、ね」


 夕げの支度が終われば次は片付けをし、そしたら女中が二つに別れて交互に夕げを取る。そうすれば辺りは真っ暗になり、もう今日は掃除をすることは叶わなくなる。従って明日へと持ち越しになるのだ。






 凪螺が台所につけばもうそこでは皆(みな)、忙しく動いていた。なにせ食事は何百人分も作らなければならないのだから。


 「あっ凪螺さん、こちらをお願いしてもいいでしょうか」


 忙しなく(せわしなく)動いていた女中の一人、奈美が頼んだのは煮物だった。自分が凪螺よりも下なのに頼もうとしているからか酷くビクビクしていた。


 「わかったわ、奈美ちゃん」


 年は同じくらいなのに敬語で話されるのはむず痒い。でも年上の人にも敬語を使われる方が凪螺にとってはむず痒いことだった。


 まだ下準備の煮物に手をかける。今日はどのような味にしようか。


 考えているうちに手は進み、気づけばもう出来上がり寸前になっていた。


 「うん。味はいいかな」


 味見をして、満足そうに頷けば煮物の完成だ。辺りを見渡して、他ももう終わりそうなのを確認する。


 「喜多様。こちらは終わりました」


 仕事をてきぱきとこなしていた喜多に声をかける。


 「それではよそっても大丈夫よ」


 その言葉に並べられた小鉢を手に取り配分を考えながらよそる。己が作ったのは全員分の1/3のほどだ。さほど苦労せずによそい終わりお膳にのせる。全てが揃えば今度は女中たちがそれを広間に運ぶ作業が待っているのだ。


 「さてと」


 肺の中の空気を全て吐き出すように深い息を吐くと、気合いを入れるように声を発した。



090514 執筆
090517 更新 哀


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