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繋ぎ、繋ぐ物語
24

 時は遡り、山中。竜が旅路に就いてから、早一日が経った。

 遠くにある岡豊城を目指し、険しい山道をひたすら歩き続けている。それも、あと
半日で終わりを告げようとしていた。

「このまま行けば、着くのは日暮れだな……」

 竜は、眼前に広がる青い海を見つめた。

 そんな中、ふと、一抹の不安が胸を過ぎった。

 それは、長曾我部元親の事だ。

 彼は、頑なに竜に殺しの道を与えなかった。今回も同じだろう。いくら望
んでも、のらりくらりと近づけさせない。

 戦いこそが、今の竜が生きる為の、唯一の術だというのに。

 この身体は、一体何時まで保つのだろうか。もうそろそろ、ガタが来ても可笑しく
はない。

「でも、保たせなくては……!」

 胸元で手を握り締め、堪えるように呟く。

 生きて、生き延びて、何時か本当の願いを叶える為に。

 その為には、竜には戦いが必要なのだ。

 突然、視界が歪んだ。

「……っ!」

 愕然とするも、咄嗟に木に寄りかかり、震える身体をしゃがませた。

「そんな……!!まだ、一週間しか経ってないのに……!」

 襲い掛かる寒気を堪えながら、竜は呻いた。

 竜には、命に関わる持病がある。

 その所為で、発作が定期的に起こるのだが、周期は、そんなに早くは無い。大抵、
一ヶ月から二ヶ月に一度だ。

 そして、前回発作が起こったのは、一週間程前。今までの周期より、遥かに早い。

「早く……しなければ……」

 まだ発作の治まらぬままに立ち上がり、竜は岡豊城へと向かって歩き出し
た。



090514 更新


あきゅろす。
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