繋ぎ、繋ぐ物語
8
死ぬことを恐れるな。
これは鉄則。
あれからまた幾日がたった。
「元親様――!」
竜が元親の家臣との稽古をやっている最中、一人の男が走って来るのが見
える。
「おう!如何した!」
大急ぎでやってきた男は、竜の横で同じように家臣と稽古をしていた元親
の近くに跪いた。
「申し上げます!本州にて、武田が今川を討ち取ったりと!」
「何?」
元親は稽古を一旦やめると、情報を持ってきた家臣を見遣った。
「詳しく話しな」
「はっ。……上洛を目指している武田は、目と鼻の先にある今川を討ち取る事によ
り、甲斐、信濃、上野に加え駿河、遠江を治め、徐々に領地を拡大していっている模
様」
「武田もやるなー。……ところで、毛利の方は如何なんだ?」
「特に目立った話はないのですが、………最近、可笑しな南蛮人が居ると耳に挟む程
度だそうです」
「そうか」
「アニキ、如何しやす?」
思案深げの元親に、家臣の一人が口を開く。元親は片手をひらひらと振った。
「どうもこうも、別にする事なんてねぇーよ。今はこの平和をじっくり味わっとき
な!毛利が来たら、あっという間に大忙しだぜ!?」
「おおー!」
「おし、おめぇーもご苦労さん。しっかり休んどきな」
「は、失礼仕ります」
「おうしっ、稽古の続き始めるぞぉーー!!」
「アーニキィーー!!!」
元親の掛け声に活気付く家臣達を見つめ、竜は深いため息をついた。
090428 更新
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