繋ぎ、繋ぐ物語
6
「……長曾我部元親」
竜は低く呟いた。
広げた書類に記されているのは、初めて貰い受ける仕事の内容。
「何だ。気に入らないか?」
「当たり前だ」
竜は、先程の言葉から颯爽と立ち直った元親を睨み付けた。
「商船の護衛ならまだしも、何故、私がお前の家臣の稽古に付き合わなければならな
い。しかも仕事と言える内容なのか、これが」
そう、今回の初仕事は、元親が率いる家臣団の稽古。
元親にとって、荒くれ者揃いの頼れる部下達だ。だが、竜にはその相手をす
る事がどうもお気に召さないらしい。
「竜、そう言わないで受けてくれって。……それが嫌なら、他に農民の手伝
いがあるぞ」
「もっと嫌だ」
竜は、命を賭けた仕事がしたいのだ。
その為に、四国統一を掲げて近海の海賊を討伐した長曾我部元親の下を頼った。だと
いうのに、自分よりも弱い相手など、誰が承諾する気になれる。
「じゃ、頼んだ」
竜の心境などいざ知らず、片手を挙げて飄々と言いのける元親。
負けた。
竜は憮然とした様子で、今回の仕事を承諾する事にした。
仕事がなければ、生き抜くことは出来ない。
生き抜くことは大事だ。
この時代、どんな人間であろうと、生き抜いてこそ意味がある。
例え、どんな犠牲を払っても、だ。
090426 更新
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