いただきもの のんたろう様より のんたろう様のサイト『ヒステリカル*ジャッジメンター』より、30000番のキリリク小説「初花凛々。」を頂きました。 CPはTOSのロイド×ゼロス。シリアスです。 花壇に植えられた色とりどりの花を見ていた時だった。 声を掛けられた方に振り返ると、俺は空びっくりして、声を上げる暇も無く、後方に迫っていた花の海に頭っからダイブしてしまった。 初花凛々。 「うぎゃ!」 視界の丁度真ん中に居た筈のロイドは、仰いだ群青色の中には居ない。 代わりに紫のアネモネの花びらが舞っていた。 「…なにやってんの。おまえ」 身体を軽く起こすと、呆れたを通り越して半ば絶望したような目で訴えるロイドと視線が重なった。 …いや、まてよ。むしろ訴えたいのは俺の方だ。 やらかい土の上とは言え、頭から突っ込んだ衝撃は相当のものがある。 立上がり、腰に付いた土をはらおうとズボンに手をやる。 微妙に湿り気を含んだ土が地面に落ちず、手のひらに残った。 純白のズボンが最悪な状態に成って居ることを想像するのにそれほど時間は要らなかった。 いや、それよりも。 「ロイドくん、何なの、それ、」 それ、 少年のトレードマークと言って良い程真っ赤な服に赤いグローブ、そしてその手に握られていたのは、同じように真っ赤な花束。 「何って見て解るだろう。 薔薇だよ。薔薇」 「そりゃそうだ」 頷いたものの、それは少年の手に握られるには酷く不釣り合いなものだった。 その似合わなさっぷりは微笑ましくすら感じられる。 たぶん自分はずっこけるリアクションをしていなかったら破顔して彼を怒らせてしまっただろう。想像して笑いが込み上げそうになったのを慌てて右手で押さえた。 「で、ロイドくんはその花束をどんな素敵なレディに渡すのかな? まあ、どうせコレットちゃんあたり、」 「おまえ」 「は」 「だから、おまえだって」 悪戯臭くにやにやとつり上がっていた口許が一気に急降下した。 …なに、いったんだこいつ? 脳味噌が疑問符でいっぱいに成り、ロイドの奇怪すぎる行動と言葉の真意をなんとか考えて見たけれど上手いこと纏まらない。 取りあえず、俺さまですらそんな派手な花束、女の子に送ったことないぞ。 いや、どちらかと言うと俺が貢がれる方だったけど。 それなのに、ロイドは、それを、俺に…、??? ひとり混乱する最中、気付けばロイドはすぐ近くまで歩み寄っていた。 「ろ、い…、」 名前を呼び目を合わせようとしたが、険しすぎる少年の瞳を一瞬だけ見ると、何も言え無くなってしまう。 こわい、なんでそんな真剣な顔してるんだ。 そういえば、会ったときから一笑もしないでやけに真面目な顔していた。 「ゼロス、」 近付く足音がやがて止まり、ぽん、と肩を軽く叩かれる。 「ろ、いど、くん…?」 恐る恐る顔を上げると、驚く程ロイドの顔が迫っていた。 やば、これって、もしかして… 気付いた時にはもう既に遅し。 ロイドのくちびるが慌てふためく俺のくちびるをしっかりと捕らえていた。 途端、蒸気がのぼりそうなくらい顔が熱くなるのを感じる。 心臓がこんなに強く鼓動を打つことなんてこの先もう無い気がする。 下手したら、こ のまま自分は死んでしまいそうだったから。 「っ…なに、すんの…」 とても長く思えた数秒間が終わり、ロイドの顔がゆっくりと離された。 まだ俺の顔は真っ赤な気がする。 にも拘らず、俺をこんな状態に陥れた男は涼しい顔で素知らぬふりをしている。 重々しさすら感じさせるその表情は、少年臭く明るい彼にまるで似つかわしくなかった。 不審げに見つめる俺の瞳をロイドも見返す。 「迎えに、来たんだ」 確かにその口はそう言った。 訳が分からず、俺は再び狼狽した。 迎えに、って…、キスされて、おまけにロイドが今も握り締めている薔薇は俺に捧げるもので… まさかプロポーズじゃあるまい。 …じゃあなんなんだ。 目の前の少年の真面目過ぎる表情が引っ掛かる。 ロイド、お前、柄にもなく眉間に皺寄せてないで、いつもみたくはっきり言えよ。 抽象的過ぎて意味不明なんだよ。 真っ直ぐなのがお前の取り柄だろ。 なぁ、一体全体何したいんだよ、お前はさ。 「ゼロス、あのな…」 一呼吸おいてロイドは顔を上げた。 がさがさと懐の中を探り、丹念に真っ白な布で包まれた手のひらに収まる程度の何かを。 ゆっくりと、ロイドは柔らかな布を硝子細工でも扱うかのように、剥がしてゆく。 「これ、…お前の輝石」 亀裂の入った深翠の石は確かにロ イドの手の上に存在していた。 瞬間、背筋に氷水を流し込まれたような感覚が鋭く走った。 いや、幻覚なのかもしれないな。 今俺が感じている感覚も感情も。 「そっかぁ…俺ってば、勘違い、してたんだ…」 ほう、と息を吐き、諦めがついたように言葉を紡ぐ。 「俺は、とっくの昔に死んでたんだな。」 思えば変だったんだ。 どうして周りの景色は変わっているのに俺は変わらなかったんだ。 どうしてずっと外に居たのに平気だったんだ。 どうしてロイドの背が伸びて大人に近付いているのに気付かなかったんだ。 それはすべて、おれのときが止まっていたから。 真紅の薔薇を見て、断片的に跡切れて解らなくなっていた記憶が、戻ってきた。 俺の身体から吹き出た赤を鮮やかに思い出させる。 でも、あの時のロイドがどんな顔で居たかは思い出せない。 「ごめん、ゼロス、ごめん…」 あ、やっとロイドらしくなった。 今にも泣き出しそうな子供の顔を見るとやけに安心してしまう。 ばかだな、お前、なんで謝るんだよ、悪いのは俺なのにさあ。 意外と自分が死んだ事を受け入れるのは簡単だった。 もう大分前に受け入れてたしな。それよか、何で忘れていたかの方が不思議だ。 俺は、俯いてしまったロイドを包むように抱き締めた。 当然、物質世界に存在するはずがない俺がこいつに触れられるわけもなく、俺の手はロイドの身体をするりと突き抜けてしまう。 さっきは、ちゃんと触れた気がしたのにな。多分俺が認めてしまったからなのかな。 「ごめ、ごめん…、俺、ゼロスに酷いことしたって解ってる。 でもやっぱり、お前のこと、すきみたいなんだ。 赦されるわけないって解ってる。 それでも…、すきで…いたい…んだ…」 ぐずぐずと情けなく鼻を啜る音が聞こえる。 ロイドの瞳から落ちただろう大粒の滴が、俺の足を擦り抜けて地面に染みた。 …どうにかなってしまいそうな気になる。 「なあ、ロイド…、俺、やっぱり死にたく無かったのかもしれないや。 どうでもいいやあ、って思ってた人間がだぜ。 笑えるくらい格好悪いな…俺さまってば。 でも、お前までそんなんじゃ、…いけないよ。 だからさ…俺は…、」 r> 『お前を赦すから』 そうすりゃ、お互い幸せだろ? お前も、俺のこと悔やまなくて良いし、俺も心配せずに行くべき場所にいける。 だから、もう、 さよなら、 耳元で囁くとロイドが顔を上げた。 ぐしゃぐしゃに崩れた台無しの顔。 後ろ髪を引かれる思いだ。 でも俺には解る。 俺のからだが空気に融けていく感覚が。 消えてしまうということが。 そしてもう二度とロイドには逢えないと言うことが。 ごめん、やっぱり俺もお前のこと、好きでいたい。 神様なんて一度だって信じたことないけど、どうかお願い、愚かで都合の良い人間に少しだけ時間を、 ロイドは確かに消えていくゼロスが自分の唇に触れた後微笑んだのを、見た。 頬にそっと触れると、いつの間にか風に流され涙が乾いていた。 僅かに残った涙の軌跡を辿って指を唇まで下ろし、なぞるが当たり前に何も残ってはいない。 ロイドは重たく息を吐くと、真っ直ぐ歩きだした。 百色の季節の花々が咲き誇る花壇を横切り、奥へ奥へと進むとそこには十字を形取った真っ白な石があり、地面には控え目に花輪が飾られていた。 更に近付いて見ると、ゼロス・ワイルダーここに眠る、とはっきりした字体で彫られていた。 話は一週間程前に逆上る。 ひとり、未だ回収されて居ないエクスフィアを探して世界を周っていたとき。 会うや否や凄い形相で睨み付けてきたと思った彼女は、次の瞬間そこが街のど真ん中だと言う事も忘れて、泣き崩れた。 彼女は言った。 一言だけ、 『お兄さまを救って』 と。 もう会うこともない、いや会うことのできるはずもない彼女が、何処にいるか定かでないロイドを自ら探し、請うことは、何と屈辱的で胸を引き裂かれるようなことだったろう。 それをロイドに想像することなど出来ない。 否、赦されない。 兄に対するセレスの想いはセレスだけのものであって、ロイドが土足で踏み込める領域ではない。 初め、自分には資格など無いと思っていた。 セレスやセバスチャンが語りかけても決して振り向かないゼロスが俺の声に答えてくれる筈など無いのだと。 けれど、まるで生きているように美しい彼の姿を見た途端、その思いが吹き飛んでしまった。 まるで蜜に誘われる蝶々の如く、ロイドは花壇の方へと近付いて行った。 何て都合の良い奴だろう。 結局、割り切っていたつもりで何も変わってなかったのは自分の方だ。 それに比べてセレスは強くなった。 大嫌いだと散々罵っていたロイドに頭を下げて、願いを請うた彼女は、世界中のどんな女性よりも凛として格好良かった。 そして、自分はやはり臆病になっていた。 彼の変わらぬ表情を見た瞬間、予想通り、喪いたくない、と思ってしまった。 ばかだよ。本当に。 コップから零れ落ちた水が元に戻るか? 俺が考えていたことは、つまり湿った土を喰うのと同じだ。 だからやっぱり、間違ってなかった。正しくもなかったのかもしれないけれど。 どちらかと言うと派手好きだった彼が、生前、ワイルダー家の裏庭にひっそりと墓を作って欲しいと語っていたそうだ。 しゃがんで、ゆっくりと上から下まで白い十字を見つめ、ロイドは、久しぶり、と呟いた。 墓参りをするのは初めてだった。 セレスのことを考えてこの家には近付かないようにしていたのだが、実際のところ、ゼロスが死んだという事実を再び受けとめることを恐れていただけなのかもしれない。 でも、もう、 真っ赤な花束を墓の前に置いて祈ると、ロイドは立ち上がった。 ずっとずっと胸の奥に引っ掛かっていた何か、 それが無くなってしまい何処か悲しい気がするのは、やっぱり俺がゼロスを好きだった一番の証拠なんだろうな。 「ゼロス、俺はやっぱり生きるよ。 それで、お前を好きでいるよ。忘れない。絶対。」 お前はそれを赦してくれるか? ひっそりと呟くと、乳白色の墓が太陽を反射させて光った。 土の中の彼は答えない、当然。 けれどもロイドは歩き出した。 過去を生きるのではなく、その先を作って行くために。 新しい出発を祝福するように爽やかな風が髪を棚引かせ流れた。 小さな十字は、最期に見た時よりも随分大きくなった後ろ姿を、小さくなるまで見届けていた。 end ざんげ。 シリアスが何なのか良く解っていない様子です。 120%くらいお笑い人間なので、痛い文章しか書けません。 言い訳です。すみません。もう逃げません。 とりあえずゼロスが猫被りすぎだと思いました。お前何処のヒロインだ。 エ●リスじゃないんだぞ、お前は。 と言うか、エアリ●だと思ってるのは自分でした。すみません。エア●スファンの皆さん。(私もファンです) 相変わらずごちゃっとしてて読みにくい文章でごめんなさい。 行替えがおかしいです。(死) では、桐山みかん様、リクエスト有難う御座いました。 ご希望通りの文章が書けなくてすみません…(土下座) [前へ] |