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いただきもの
野原風吹様より
野原風吹様のサイト、『風吹く野』よりフリー小説「淋しい兎」を強奪してきました(痛)。

CPはTOSのロイド×ゼロス。

たまたま立ち寄った街に、移動動物園っていうのが来ていた。
何でも世界各地を移動する動物園らしくて、小動物なら触ることが出来るという事もあり、物珍しさから俺たちはそこを覗いた。

間近で動物に触れられる事に興奮していたんだろうか。
はしゃいで兎と戯れていたコレットとジーニアスだが、ふいに小さく悲鳴があがった。

「キャ…っ!?」

「コレット!…あ、兎が…っ!」

見るとコレットの抱いていた兎が嫌がって逃げ出したらしくて、真っ白で小さな兎が檻を出て外に駆けていく。
だが、その兎はすぐに誰かにひょい、と持ち上げられた。

「…悪かったな?」

そう言いながら捕まえた兎を優しく腕に抱え微笑んでいたのは……ゼロス。
ゼロスは抱えた兎を優しく撫でながら、檻のほうへと歩み寄る。

「…ほら、コレットちゃん。兎は気の弱い生き物なんだから、あんまり強引に扱っちゃあダメでしょーよ」

「うん、ごめんなさ〜い…兎さんもごめんね?」

ゼロスから返された兎に、コレットは申し訳なさそうに謝っていた。
それを見てゼロスは満足そうに頷く。

「よしよし。今度からは気を付けないとダメよ〜、コレットちゃん?」

そう言い残して二人から離れたゼロスに、俺は駆け寄り話しかけた。

「ゼロス」

「ん…?何、ロイドくん」

振り向き微笑んだゼロスはそう問いかけてくる。
俺は彼の隣で足を止めると首を傾げて尋ねた。

「ああ、お前…兎好きなのか?」

「は…?」

訳が分からないといった感じでゼロスは間抜けな顔をする。

「だから、さっき兎のこと詳しかったし…」

「……はぁっ;;」

必死で説明しようとしたら何故か溜息をつかれた。

「あのねぇロイドくん。あれくらい常識よ?リフィル先生の授業で習わなかった?」

「習ったかもしれないけど忘れた」

「…リフィル先生が聞いたら泣くぜ〜?;;」

ゼロスはそう言ったけど、俺は蹴られるような気がするな。

「まあ、いいけどね〜。
じゃあおバカなロイドくんに、この麗しのゼロス先生がもう一つ教えてやるよ」

「バカは余計だっ!!」

俺がそう言い返すと、ゼロスは楽しそうにくすくすと笑った。
そして、遠くに目をやり言葉を続ける。

「…兎って、淋しいと死んじまうんだぜ……?」

うっすらと微笑むゼロス。

そう言ったゼロスが、俺にはその兎に見えた……



淋しい兎

どうしてそう思ったのか…って、聞かれたら多分答えられないけど。
俺はその時そう思ったんだ。

動物園にいたどの兎より、孤独に耐えられず死んでしまう淋しい兎に。
もしゼロスが兎だったら、もうとっくに死んでしまっていたんじゃないかって。

俺にはそう思えて仕方なかった……。



「ん……?」

何かが動く気配に俺は目を覚ます。

夜。野宿をしている時のことだった。

近くで人が動く気配に目を覚ませば、ゼロスがどこかへと歩いていく姿が目に入る。
そのままゼロスは近くの小さな丘へと登ったようだった。

「ゼロス…」

なんとなくそのゼロスが気になって、俺はみんなを起こさないようにそっとその場を離れ、ゼロスの後を追い掛ける。

「どこだ……?」

辺りを見渡せば、丘の頂上あたりに腰を下ろして空を見上げているゼロスの姿があった。
月に照らされ微かにそよぐ風に紅い髪をなびかせているその姿は、ひどく幻想的に見える。

まるで、今にも風に溶けて消えてしまいそうで……儚い。

俺はそんな錯覚に捉われ、思わず後ろからその消えてしまいそうな背中を強く抱き締めた。

「っ!?…ロイド…?」

驚いて振り返ったゼロスは、俺だと分かると身体から緊張を解く。
そして力が抜けもたれかかってきた身体を、俺はぎゅっとその存在を確かめるように抱き締めた。

「…いきなり抱きついてくるなんてどうしたのよ〜、ロイドくん。
あっ、もしかして俺さまが恋しくなったとか〜?」

ふざけてケラケラと笑いながらそう言うゼロスに、俺は紅い流れのような髪にキスをして頷いてやる。

「うん、そう」

「そうでしょ、そうでしょ。やっぱ俺さまが恋し──は…?」

俺が頷くと思っていなかったらしいゼロスは、鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔になった。

だって、俺はいつだってゼロスのことしか見てないから。いつもゼロスのこと求めてる。
…お前は知らないかもしれないけどさ。

「あ、あの〜…ロイドくん?;;マジで今日はどうしちゃったのよ?;;」

普段の俺とは違う行動に困惑してるらしい。
腕の中のゼロスは落ち着かなさげに視線を彷徨わせている。

「別に…どうもしない」

「どうもしない…って、ロイドくんはいつもこんな事しないでしょーがっ;;」

そんなに俺の行動が意外だったのか、困ったようにゼロスは俺を見上げてきた。
その艶やかな桜色の唇に、俺は触れるだけのキスをする。

「っ……///」

ゼロスの唇は夜の外気に触れていたせいで冷たかったけど、対照的にゼロスの頬は真っ赤に染まった。

ゼロスって不意打ちに弱いっていうか……そういう所がなんか可愛い。
可愛い、なんて言ったら本人は「美しいだ」とか言って怒るんだろうけど。

「ゼロス……俺は、お前のこと離さないからな」

「へっ…な、何イキナリ…///」

照れてるのか、ゼロスは俺の腕の中で恥ずかしそうに身じろぎする。

「いきなりじゃない…ずっと思ってた。
お前が淋しくないように、俺がずっと側にいるからさ……」

だから、俺の目の前から消えたりしないで欲しい。
ずっと、俺と一緒に生きてて欲しい。

「……俺さまとしては、か〜わいい女の子のほうが良かったんだけどな〜。
…ま、ロイドくんで我慢しますか」

「何だって〜ッ?」

冗談、冗談〜☆と、楽しそうに笑ったゼロスは、もう淋しい兎には見えなかった。





お前が淋しさなんて感じないように、俺はお前のこと離さないから……


fin.


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