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◇バレンタインデー(京七)

「七緒ちゅわああん!ねえねえ今日は…」
「存じております」
 バレンタイン等という現世の習慣を私に教えてくださったのは、他でもない、貴方です。毎年毎年二月十四日になると五月蝿く、私に付きまとう貴方。厭でも覚えます。
「そのような、浮ついた習慣に興味がないと、以前申し上げたはずですが」
 眼鏡を持ち上げ、机に座る貴方を見下ろす。
「………」
 貴方はがっくりと肩を落として、机に突っ伏す。
「隊長、それよりも、こちらに署名と捺印をお願い致します」
「…したら、チョコレートくれる?」
「隊長」
 冷たく一言で一蹴すると、渋々と筆を取って署名をし、印を押す。
「ありがとうございます」



 それでも微かな希望を見出そうと、私について回る貴方。
「京楽隊長!」
 じろりと睨みつけると、貴方はトボトボと執務室へと帰っていった。流石に今日はサボりに行く気力はないようだとホッとする。
 だって、隊長はもてるんですもの。
 こんな日は執務室へ閉じ込めておくに限るわ。
 執務室なら、私の目を盗んでチョコレートを渡しに来る輩はいない。


 落ち込む隊長を宥め透かしながら、一日の仕事を終える。
「……」
 まだ落ち込んでいる隊長は、私の動きに全く気がつく様子がない。
 後ろ手にそっと扉の鍵を掛け、隊長へと近づく。
「京楽隊長」
「ん?何?」
「……義理ですよ」
 机にコトリと包装した箱を置く。
「………七緒ちゃん!?これって!」
 手にした包みと私を交互に何度も見比べる。リボンを解き丁寧に紙を剥がしていき、箱の中を確認する。
「……これ…手作りなの?」
「ええ、まあ…」
 実は毎年毎年用意しかけていたのだけど、上手く作れなくって、漸く去年成功に漕ぎ着けた。ただ、去年は大きく『義理』と書いてしまったために、結局渡せなくって。
 今年は、何も書かずただハート型にだけ固めた。
「……嬉しい…本当に嬉しいよ、七緒ちゃん!!ありがとう!!」
 思ったよりも、静かに喜んでくれて、少しばかり拍子抜けしたけれど、心から喜んでくれたことは解る。
「いえ…」
「食べるのが勿体ないな…」
 さっさと食べて証拠隠滅して欲しい。何時までも飾られると困るのよ。そこで、私自らがチョコレートを割って、一欠けら摘む。
「……隊長…あーん」
「あーん!!」
 大きく口を開けて、指ごとチョコレートを食べる。
「おいひぃ」
「指まで食べないで下さい!!」



 こうして、ようやく二人のバレンタインは何とか成功を収めたのでした。





アンケート1位のカプにバレンタインが訪れましたw
アンケートご協力多謝ww
結果は追って、駄文で上げたいと思いますww


20060212〜20060221

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