「わ!じゃあボクが初めて!?うわーい!やったね!!」
 春水は更に尻尾を激しく振り、一層熱心に舐め始めた。

「あんっ、ああんっ!」
 喜ぶ春水に、七緒は嫌な気分がすっかり吹き飛んだ。声が自然に出てくる。

 
 やがて体を起こした春水の瞳が、鋭く七緒を見下ろした。
「いいね?」
「はい」
 問いかけに七緒はしっかりと迷いなく頷くと、春水は笑みを浮かべた。

 口付けをし、両手を握り合うと、春水は張りつめた身をゆっくりと七緒の内へと沈めていく。
「あ…ああ」
「七緒ちゃん、きっつい」
「ああっんん」
 春水がからかうように訴えながら腰をゆるりと動かすと、七緒は身体を震わせて仰け反る。
 春水は七緒の滑らかな毛並みの尻尾をそうっと撫で、ゆっくりと大きく腰を動かす。
「はあ…ああっ」
「七緒ちゃん…」
「ああ…春水さん…」
 唇を重ね合い貪るように求め合う。

 若さ故だろうか。
 春水の動きが少し荒っぽく、力強く性急に感じる。
「あっあ、あ、激しっああっ」
「ご免よ…七緒ちゃん、うっ…気持ち良すぎ、て、止まれないっ」
「ああああっ、あっ、ああっ」




「んん…」
 疲れから一休みしていた七緒が目を覚まし、横にいる春水に目を向けると、目があった。
 どうやら春水は眠らずに七緒を見つめていたようだ。
 春水の姿は元に戻っている。自分も元に戻っているだろう。
 

「良い夢だったね」
「…はい」
 微笑を浮かべて春水が感想を口にすると、七緒も微笑を浮かべて頷く。
 優しい口付けを受けると、ざらつく髭の感触がある。
 今のこの身体が現実で、日常なのだと解る。

 時間の流れが酷く緩やかな瀞霊廷。身体の変化が百年二百年ではそれほど変わらない。
 ほんの瞬きの一時は、夢のような出来事なのだ。

「さあ、隊長起きましょう。仕事がたまってます」
「へいへい」

 
終わり。

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