「ふーん…、じゃあ俺がしていいんだ?」
「へ?」
 剣八は仰向けに寝転がったまま、頭上のやちるの襟首を摘み、軽々と自分の胸の上へと座らせる。
「剣ちゃん?」
「…ふーん…ちったあ、成長したのかな?」
 珍しいことをしみじみと呟く剣八に、やちるは驚き目を丸くするばかりだ。

 だが、やちるは程無くその理由が解ってしまった。
「どれ…」
 やちるの可愛い顎を、剣八の長い指がそっと摘み引き寄せる。
 驚きに目を丸くしていると、剣八の顔が近づいてきて唇が重なった。

「んー!!」
 舌が唇をなぞり口の中へと侵入してきて、やちるの目が驚きから確信する目つきへと変わった。
 息が唾液が酒臭い。剣八は見事に酔っぱらっていたのだ。思わず身動ぎし抵抗を示す。
 だが、剣八の強く逞しい腕は、やちるの小さな抵抗などモノともせず、何と剣八の胸の上に座っているやちるの小さなお尻まで、撫で回し始めたのだ。
「んー!んー!」
 流石のやちるも驚き抵抗を始めた。
「ちいせえケツだな…」
 唇が離れ剣八が呟く。

「んもー!剣ちゃんのよっぱらーい!!こんな酔っ払いやだー!」
 やちるは喚き剣八の頭を遠慮せずに殴った。
「ってぇなぁ…何しやがる…」
「あたしがよばいすんの!剣ちゃんがあたしをおそったら意味ないでしょー!バカー!」
 頬を殴り、目を閉じるように小さな両手で目を塞ぐ。
「はっ…………」
 鼻先で笑い飛ばしたものの、やちるの両手で目を塞がれた事で暗闇に包まれ、剣八はあっという間に眠りに落ちてしまった。



「…誕生日前日のパーティは、来年から禁止にしなくちゃ」
 やちるは眉間に皺を寄せて決意を込め呟き、剣八の懐に潜り込み小さく欠伸をした。



 翌朝、いつの間にか懐にいるやちるに、剣八は首を傾げることになった。
「……やちる…」
「おはよー、剣ちゃん。誕生日おめでとー」
「あ、ああ…」
 にっこり笑ってお祝いの言葉を述べるやちるに、剣八は何も問えずただ頷く。
「今日はこうしてよーね」
「あ?ああ、オメーがそれで良いんなら、何でも良いけどよ」
 そう呟きながらもちょっとだけ残念そうな剣八に、やちるは懐の中で小さく舌を出したのでした。



おしまい

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