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 七緒は素直に春水に任せる事にした。何と言っても十三隊で一番の女好きで有名だ。七緒本人以上に女性の扱いには長けている。

 七緒が目蓋を落とすと、春水はゆっくりと唇を重ねた。
 優しく唇が動き七緒の唇をなぞる。何度かついばむように唇が動いていたが、やがて春水の舌が七緒の下唇をなぞりはじめた。
「ん…」
 温かい感触に体が震え七緒が春水にすがりつく。
 春水は一度離れると、少しの間だけ落ち着く時間を与え、呼吸が整い始めた頃にもう一度唇を重ねた。
「んん…」
 七緒の指が春水の死覇装を掴む。
 春水が舌を七緒の口内へと進入させたのだ。驚きはしたがこういう口付けがあるのだと、七緒は書物で知っていた。こういう時は自分も応えた方が良いのだろうかと思い、怖ず怖ずと舌を伸ばして見る。
 すると、春水はたちまち七緒の舌を見つけて絡めとってしまう。
「うんん…ふ…んん…」
 激しく執拗な舌遣いに七緒は鼻を鳴らし喉を鳴らして、春水にしがみつく。

「ん…七緒ちゃん…」
「はぁ…はぁ…」
 七緒の唇は濡れ、息苦しさもあって唇は半開きになって、重たげに持ち上げた目蓋の下には潤んだ瞳が見える。
 そんな七緒の表情をまともに見てしまった春水の喉が鳴る。
「参ったね…どうも…」
「隊…長…」
 ぐいと無理矢理七緒を引き剥がし、立ち上がると鍵を外し、扉を開ける。
「何時でも逃げていいからね…」
「え?」
「や、このまま先に進みたくなってきちゃって…」
 苦笑いを浮かべながらの台詞に、七緒はたちまち真っ赤になってしまう。
「…ま、まだ勤務時間中です!」
「うん、でも、嬉しくって止められそうにない」
「我慢して下さいっ!」
 ここで押し倒されては堪らない。七緒は今度は青ざめて言い募る。
「はははは…」
「こんな所でっ!毎日ここを使うのにっ」
 七緒が真っ赤になって並べる言い訳に、目を見張る。
「七緒ちゃん…、今夜食事に誘ってもいいかな?」
 春水は微笑を浮かべて尋ねる。
「……はい…」
 七緒は小さく頷いた。
「ありがとう、七緒ちゃん」

 
 この後、二人は仲良く書類を片づけて、定時に上がった。

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