1(もう一つの氷輪丸ネタ)
「おい、京楽…隊長」
「ん?何だい?日番谷くん」
不意に呼び止められた春水は、不機嫌そうな表情の同僚を見下ろした。
「……その…」
「ん?」
「ふう…今日はとうとう見つからなかったわ…」
極稀にだが七緒が春水を見つけられない日がある。それは大抵においては春水が何かを企んでいる時で、この時ばかりは春水はそれは見事に霊圧を消し去ってしまうため、七緒ではどうしようもない。
後日に事情を知ることになるだろうが、副隊長としては釈然としない気持ちが残るのも確かだ。
春水を探し回った後に書類仕事を片付けた為、今は疲れが溜まっている。
「はあ…」
七緒は大きな溜息を吐きだし抱えていた本を持ち直す。疲れている時は本の重さが身に染みてしまうのだ。
明日こそは春水を何としてでも捕まえて、隊長決済の書類を片付けてしまいたい。
「はあ…」
ようやく自室に辿り着き七緒は大きく溜息を吐きだし扉を開けた。
「七緒ちゃん!めりーくりすます!」
「は?」
自室の中から何故か春水の声が聞こえ、七緒は溜息とともに俯いていた顔を上げた。
「隊長!!探したんですよ!!」
「ご免よ。でも今日はどうしても七緒ちゃんの為に用意したくて」
「何を…」
「めりーくりすます」
春水は微笑を浮かべて、もう一度現世での挨拶を繰り返し七緒を抱きよせ頬に口付けを落とす。
そっと春水に肩を抱かれ部屋の中へと誘われる。
そこには何所から探してきたのかわからないが樅の木に似た針葉樹と、木に巻きついた色取り取りの電飾や飾り、雪に見せかけた綿でクリスマスツリーが作られ据えられていた。
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