「七緒。至らぬ息子だが、よろしく頼む。お前だけが頼りだ」
「あ…はい…」
 当主の笑顔と強い口調に七緒はつい頷いてしまった。
「…普通は違うんじゃないの?」
「何を言うか、どう考えてもお前が七緒の世話無しで、この先何もできんのは目に見えとるだろうが。浮気でもして見放されんようにしろよ」
「酷いなぁ…それ、息子に言う台詞?」
 ぼやく春水に父は言い返し更には忠告までする。
 春水は苦笑いを見せながらも七緒へと向き直り、そっと手を取った。

「…七緒ちゃん。納得してくれた?ボクのお嫁さんになってくれるかい?」
「…あ…はい…私でよろしければ…」
 七緒は頬を染め幾度目かの春水のプロポーズに、ようやく承諾の返事を返したのだった。




 春水の部屋へと向かうと、七緒は一度辞して服を着替えようとした。
「待った…七緒ちゃん」
「はい?」
「メイド服にならなくていいからね。普通の私服に着替えておいで」
「ですが…」
「婚約者がメイドっておかしくないかな?」
「あ…は、はい…」
 七緒が頷き出ていくと、春水もスーツから私服へと着替える為に上着を脱いだ。
 何時もなら七緒が受け取り、クリーニングに出す所だ。上着は椅子に掛けて、クローゼットを開け私服を取り出し着替えると、ソファへと座り目蓋を閉じる。

 まさかあんなにするりと愛の言葉とプロポーズの言葉がでるとは思わなかった。七緒を説得するうちに、自分自身も納得してしまった。
 七緒が離れるなど考えられない。
 そして一刻も早く七緒の体に己の印を付けたいと思ってしまう。


 しばらくするとドアが小さくノックされた。
「は〜い、どうぞ」
「失礼致します」


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あきゅろす。
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