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「…座りませんか?」
「…いいよ」
春水はあっさり頷きソファへと座った。
だがしかし、七緒を自分の膝の上へと座らせ腰を抱き、放そうとはしない。
「…あの…」
立って抱きしめられるよりも春水の顔が近くなり、七緒は戸惑う。
「七緒ちゃん、結婚して?」
「……私のような下働きの者が…」
「何言ってんの!今時っ!そんなの関係ないよ」
「…ですが…」
「誰も反対しないし、させない」
互いに真剣なやり取りだが、立場の違いから平行線になるのは目に見える。
「七緒ちゃん。こんな言い方は卑怯だと解ってる上で言うよ。ボクは後継ぎじゃない。遊び人の次男坊だ。兄貴に血筋やらは求められるけど、ボクは身を落ち着けるだけでもありがたいと思われるに決まってる。それに七緒ちゃんをわざわざ秘書にしたのは、親父殿だ。七緒ちゃんがボクの奥さんになって一番喜ぶのは親父殿だよ。やっと春水が落ち着く。七緒ちゃんならボクの手綱を握れるってね」
珍しく滔々と語る春水を、七緒は目を丸くして聞いていた。
「…な、何を…」
「…周りの事は考えなくていい。ボクの事だけ考えて欲しい」
春水だけを…。
あまりに魅力ある言葉に、七緒は一瞬気持ちが傾きかけたが、首を小さく振り己を諌める。
その様子に春水は目を細め、手を動かし始めた。
腰を抱いていた片手を足へと滑らせスカートの中へと滑りこませる。
「なっ、止めて下さいっ」
「既成事実を作ったほうが、早そうだからね。子供ができれば、誰も反対しないだろう?」
口元にだけ笑みを浮かべた春水を見返し、七緒は恐怖を覚えた。
こんなに冷酷な春水を見たことがない。
何時でも七緒には笑顔だったから。
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