耳の側に唇を寄せて囁く。
「七緒ちゃん…愛してる…。ボクのお嫁さんになって…」
 甘く低く掠れた声のプロポーズに、七緒は震えながら春水を見上げた。


 聞き間違いではないのか?白昼夢ではないのかと思う。
 呆然と言葉の出ない七緒に、春水は焦れてしまい、返事を聞く前に七緒の唇を奪ってしまった。

 七緒を抱きしめ、荒々しく唇を重ねる。
 固く閉じられた唇を舐めて舌でこじ開け、口内を探り舌を絡ませる。
「んん!んー!」
 貪るようなキスにようやく七緒も現実と認め、春水の腕を叩き離れるよう促した。

「ひ、酷いっ、ファーストキスなのにっ」
 瞳を潤ませ頬を赤らめ抗議する七緒を見て、春水は更に唇を重ねる。
「んんっ!…春水様っ」
「…七緒ちゃん…結婚しよ?」
「ちょ…」
「ねえ、結婚しよ?」
 七緒は頭を整理したいのに春水は待ち切れず何度も迫り、返事を促す。
「春水様、落ち着いて下さいっ」
 役職ではなく既に名前で呼んでいるのだが、二人は無意識で気付いていない。

「七緒ちゃんが表情を無くして気持ちを閉じ込めてしまったのは、ボクがだらし無いからでしょう?もう、女遊びは止めるから。ボクと一生一緒にいてよ七緒ちゃん…」
 ずばりと七緒の秘めて来た気持ちを言い当てられ、慌ててしまうが、同時に春水はとても大切な事を言っている。
 執拗に繰り返すプロポーズは切羽詰まっているようにも聞こえ、七緒は眉間に皺を寄せ困ったような表情になり、春水を見上げるばかりだ。
「あの…春水様…」
「何だい?七緒ちゃん」
 七緒は一旦ソファにでも座って落ち着いてみたいのだが、春水は逃がすまいと抱きしめたまま放そうとしない。


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あきゅろす。
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