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解毒剤が出来次第連絡する約束をし、二人は八番隊へと帰ってきた。
「その姿でうろつけないよね…薬ができるまで、ボクの部屋来るかい?」
春水の誘いに七緒は暫く思案した後に頷いた。
「自分の部屋では不便がありそうですし…、ご迷惑でにゃければ…」
「迷惑なんてないよ、にゃにゃ緒ちゃん」
「は?」
「だって、さっき自分でそう言ったでしょ?にゃにゃ緒ちゃん。その姿の間だけ、そう呼ぶよ」
「……」
春水の喜々とした様子に、七緒は黙り込んだ。これは何を言っても無駄だと思ったのだ。
だが、正直な所、春水の明るさに救われてもいる。十二番隊の悪い噂は絶える事がなく、女性死神協会でも稀にネムが変な物を持ち込み、迷惑をかけられることがあるから尚更だ。失敗作だと言っていたこの薬の解毒薬が、本当に作られるのかも不安を感じてしまう一つの要素になっている。だからこそ、春水の暢気さが今はありがたいのだ。
「…くあ…」
欠伸が出てしまった。
「にゃにゃ緒ちゃん、眠い?色々あったから、疲れたかな?猫ちゃんは寝るのも仕事だし…一緒にお昼寝しようか」
春水の猫撫で声に七緒は睨み上げる。
「隊長、そう言い訳して、サボるおつもりですにぇ?」
「そんなことないよ〜?」
と、言いつつ視線を反らすのだから、肯定しているようなものだ。
「…まったく…」
七緒は溜息を吐き出しながらも、今襲い来る睡魔には勝てそうもなかった。眼鏡を外し目を擦る。
「ささ、にゃにゃ緒ちゃんねんねしよ?」
「しかたにゃいですにぇ…」
横たわった春水に促され胸元で丸くなる。目蓋を落とすと、瞬く間に眠りに落ちた。
目を覚ますと、春水は先に目覚めていて七緒を優しい目付きで見つめていた。
「おはよ、にゃにゃ緒ちゃん」
呼び掛けられた名前でまだ自分は猫のままだと解った。七緒は小さく欠伸をして、頭をぐりぐりと春水の胸元に擦りつけた。
「にゃにゃ緒ちゃん?」
「…いや…こんにゃの…」
寝起きで気が緩んでしまっていたのだろう。七緒は遂に弱音を吐き出した。嫌々と首を振りしがみつく七緒を、春水は優しく抱きしめ、囁いた。
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