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「で、効果はどうなの?解毒剤はっ!?」
「それについては知らんヨ。事故だからネ。今ある薬は完成品だから、半刻程で消えるが…、そもそも耳と尻尾だけが生えるモノなんだヨ。小さくなるのは、実験にもなかったからネ」
「そんな事はどうでもいい。直せないのか?」
「何だと?」
 苛立つ春水の刺々しい言葉に、マユリもいきり立つ。
「解毒剤くらい作れるだろう?君が作った薬なんだから。あ、まさか作れないのかな?」
「作れるに決まってるヨ!私を誰だと思ってるんだネ!」
「早急に作ってもらおうか」
 睨み合う二人の隊長を見上げ、七緒はオロオロとし、ネムは黙って見つめている。

「ネムっ!血液を採取しろっ」
「…はい、マユリ様」
 マユリはネムに命令すると、実験室へ足早に向かった。

「…やれやれ…挑発に乗ってくれたか…」
 春水は苦笑いを浮かべて七緒を見下ろした。
「…腕を…」
「あ、はい…」
 ネムが血液採取用に注射を用意し、七緒は袖を捲くり小さな腕を差し出した。
「…ん…」
 ちくりとした痛みに眉を寄せた七緒を、春水はハラハラと見守る。
「…七緒ちゃん…」
「大丈夫です。あ、ニャムさん」
「…はい」
「薬はどれくらいで、できそうですか?」
 七緒はネムを呼び止め尋ねる。
「…一両日中には…」
「そうですか…」
 仕事が溜まってしまいそうだと、肩を落とす。
「……あのぅ」
「にゃんでしょう」
「…猫の言葉も?」
「そうなんだよ。聞いてると、な行がにゃとかになってるみたいなんだよね…どうも」
「…そうすると…ご自分のお名前を言うと…」
「…伊勢…にゃにゃ緒です…」
「…うっわぁ〜、にゃにゃ緒ちゃんっ!か〜わ〜い〜い〜」
 ふて腐れたかのように名乗った七緒の愛らしさに、春水は堪らず抱きしめ頬を擦り寄せた。
「いたっ、隊長っ、髭痛いっ」
 小さな頬に春水の頬を擦り寄せられたものだから、七緒は堪らず悲鳴を上げる。
「ご免よ…すっごく可愛くって、つい…」



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あきゅろす。
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