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「耳だけでなくって、尻尾まで生えてるんだ…」
「え?耳?」
「そうだよ。ボクが最初に驚いたのは、お耳がぴょこんと生えてきたからなんだよ」
 春水は七緒に行李に入っていた眼鏡を渡し、机の上にあった鏡を取って見せる。
「にゃ、にゃんですかっ!これはっ」
 鏡の中の小さな七緒には、頭に猫の耳が生えて、口は八重歯が小さな牙に変わっている。
「猫だねぇ…おまけに小さくなっちゃって、子猫ちゃんになっちゃったねぇ」
 青ざめて鏡を見て固まってしまった七緒に、春水は暢気な事を言い出し、鋭く睨み付けられる。

「…ぷちゅんっ」
「大変だ。襦袢のままだと風邪ひいちゃう。早く着なくちゃ」
 七緒の可愛いくしゃみに、春水は慌てて襦袢と袴に鋏で穴を開けた。そして、着替えを終えた七緒を抱き上げると、十二番隊へと向かった。




「何だネ、騒々しい…」
「治してよ。七緒ちゃんを」
「は?」
 春水は七緒を腕に抱いたまま、説明をした。七緒は黙ってやり取りを聞いている。
 マユリは春水の説明を退屈そうに聞いていたが、側に控えていたネムが口を挟んだ。
「…マユリ様」
「何だネ」
「…あの、忘年会用にと開発していた、…動物の魂を丸薬にしていたものではないでしょうか…」
「…オオ!それか、猫と言うから何かと思ったヨ」
 そこでネムが春水と七緒に説明をした。
「…実は、年末の忘年会の余興にと、動物の魂を閉じ込めた丸薬を開発していたのです…」
「それがなんで七緒ちゃんに?」
「…誤って、他の薬などと間違えて…」
「…何かの実験しようと、適当にばらまいたんじゃないの?」
 ネムの説明に春水は口元にだけ笑みを浮かべ、問い返す。
「やるなら、もっと徹底的に広めるヨ。実験サンプルは多い程良いんだからネ」
 マユリの視線は七緒を舐めるように這いまわり、七緒は堪らず春水にしがみついてしまう。小さな体になってしまった為に、心細いのだ。



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