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「じゃあね、耳掃除して!添い寝して!それならいいでしょ?」
「はい」
 ひざ枕をして耳掃除と、夜は一緒に添い寝ならば負担は掛かるまいと苦笑いで頷く。
 膝の上に春水の頭が乗り、七緒が耳かきを用意すると、春水が含み笑いをする。
「何ですか?」
「昔はボクの膝にすっぽり収まってたのにね。ボクをひざ枕出来るくらいになったんだなぁって」
「…そうですね」
 七緒も微笑を浮かべて頷く。
 勿論、ひざ枕に限らず、春水と大人の女として愛し合えるようになってもいるのだが…。



「七緒ちゃん…」
「何ですか?」
「ボクね…誕生日が嬉しいと思えるようになったのは…七緒ちゃんがお祝いしてくれるようになってからだよ…」
「え?」
 布団に横たわり、七緒を胸に抱きながら、春水は眠たげな口調で告白する。
「…ボクの我が儘を聞いてくれるだなんて…素敵なプレゼント…七緒ちゃんが初めてだ…」
 笑みを口元に浮かべたまま、春水は眠りについた。

 七緒は春水の告白に驚きながらも、あることに思い至った。
 春水は貴族だ。
 幼い頃は与えられて当たり前、成長してからは胡麻擂りや、接待のようなものだったのだろう。
 七緒としては、他の女性のような持て成しができない、苦肉の策なのだが。


「…喜んでいただけたなら…」
 七緒も微笑を浮かべたまま目蓋を落とし、春水の胸に潜り込み眠りについた…。




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あきゅろす。
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