3
「浮竹隊長、虎徹さん、結構です。無理矢理連れて行った所で、また逃げられるだけですから」
 溜息と共に静かに七緒が、二人を止めた。

「伊勢…」
「浮竹隊長。あの…副隊長を辞退…とか、移動願いと言う物は、出して良いものでしょうか…。資料を見ても、あまり例がないようで…」
「待て、伊勢」
「七緒ちゃん…」
「伊勢さん…」
「…隊長のお心に添うようにと思ってきましたが、矢胴丸副隊長にはとても適わず…。隊長が私の顔を見たくない程に逃げられるのでは…」
「おい、京楽っ!」
 七緒の力ない声に十四郎が焦る。
「七緒ちゃん…ご免よ。そんなに苦しめていたなんて…」
 力なくうなだれ、廊下に座ったままの七緒に、春水は静かに歩み寄り膝をつく。
「ボクの我が儘で、君を苦しめていたなんて…」
「隊長…」
 春水の言葉に顔を上げた七緒の瞳には、うっすらと涙が滲んでいた。
「七緒ちゃん…」
 春水は七緒の頬にそっと手を添えると、顔を近づけていく。

「え?たい……ん!?」
「やった」
「わあ!キスしてる!」
 七緒は自分の口を塞いだのが春水の唇で、清音の声でキスをされているのだと自覚する。
 ようやく自分の身に起こっている出来事に、春水の胸を叩いて逃れようとするが、春水はやっと触れる事ができた七緒を離そうとせず、それどころか舌を絡ませて、七緒をしっかり味わうように深く入っていく。
「んーんんー!」
「わあ…、こんな長いキスシーン初めてみた…」
 普段騒々しくても元気でも、清音も女の子である。頬を赤らめて唾を飲み込み見入ってしまっている。
「…ごほん。京楽。お楽しみの所悪いが、続きは余所でやってくれ」
「野暮だねぇ…どうも…」
 十四郎の制止に、ようやく唇を離し、口元をさり気なく拭うと、腰砕けてしまっている七緒を抱き上げる。
「じゃ、お邪魔しました」
 
 そのまま、姿を消してしまう。想いを一刻も早く伝えたくて。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!