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「ああ…、真面目にこんなに惚れ込んじゃうなんて…」
「じゃあ、何時までもさぼってないで、戻ったらどうだ?」
「駄目。密室で二人きりになると、押し倒したくなるから」
「押し倒して本懐を遂げるより、嫌われない方を選ぶわけか」
「七緒ちゃんを傷つけるのは、ボクの本意じゃないのさ」

 嫌われて離れるよりも、傍に置いて見つめていたい。

「華を手折ると枯れるだけだからね。そのまま咲かせて傍で見ていたい」

 友人の思いがけず真剣な口調に、十四郎は驚いた。
「その調子では、近ごろ夜遊びもしてないんだろうな」
「うん。こうして酒で紛らわしてるだけだね」
 他の女を抱こうとすれば七緒がちらつく。ちらつくと萎えてしまうのだ。
「重症だな」
「だね」
「珍しいな。そんなに悩んでいるのは」
「…そうだねぇ」
「だいたい伊勢がお前の下へ来てどれくらいだ?」
「あ…もう、百年は軽く経つのか…わーすごいよ。よく我慢してる」
「自分で言うな」
「…ま、二百年以上も片思いしてる浮竹には負けるけど…」
 茶を飲みながら、突っ込み返す。
「ぶはっ!げほっげほっお、俺を引き合いに、出すなっ」
 いきなり切り替えされて思わずむせ返る。真っ赤になり反論しようとした所へ、元気な声に会話がさえぎられる。
「失礼します!十三番隊第四席小椿仙太郎です!浮竹隊長!」
「仙太郎か、なんだ?」
「八番隊副隊長がいらしてます。御通ししてよろしいでしょうか!」
 障子戸の向こうから仙太郎が内容を告げる。
「噂の主がきたな。いいぞ通してくれ」
「わ、友達甲斐のない…」
 そう呟き、腰を上げて窓に手を掛ける。
「失礼します!十三番隊第五席虎徹清音です!伊勢副隊長をお連れしました!」
 今度は女性の元気な声。
「おう、清音か、入っていいぞ」
 十四郎は障子戸に声を掛けながら、春水の足首をがっしりと掴む。
「浮竹ひどい」
「ひどいのはどっちだ」
 そんなやり取りの間に、障子が開けられる。
「失礼します!って、ああ!」
「清音手伝ってくれ」
「はいっ!」
 十四郎と清音と二人がかりで、春水を捕まえようとしたのだが…。

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