6

 翌日、宣言通り明け方まで離して貰えなかった七緒は、昼過ぎに目が覚めた。
「…ん?春水さん…?」
 窓は開け放たれ、太陽の光が室内に溢れ、じわじわと暑さが感じられるようになる。
 眼鏡を探して掛け、自分の姿を見ると白い肌にあちこち紅い跡が残っている。
 気だるい体を起こしぼんやりと室内を見渡すと、寝台に掛けられている浴衣を手にして着た。
「あ、七緒ちゃん。起きちゃったんだね。ボクが起こしてあげたかったのに」
 春水は風呂敷包みを手に勝手に部屋へ入ってくる。
「結構です」
「つれないねぇ…どうも…」
 素っ気ない七緒の返事に、春水は苦笑いになる。
「ま、いいや。お昼ご飯。お腹空いたでしょう?」
 春水はどうやら仕出し屋へ行き、弁当を買ってきたようだ。
「お茶いれてる間に顔洗っておいで」
「はい…」
 七緒が寝台から立ち上がりよろよろと歩き出すと、春水が慌てて体を支える。
「無理させちゃったね。ご免よ」
「…加減して下さい…」
 七緒が眉間に皺を刻み文句を言うが、力ない声に本当に怒っているわけではなさそうだと感じる。
 七緒に付き添い、身支度を整え終わると、春水は弁当を広げた。

「はい、七緒ちゃん。どうぞ」
「ありがとうございます」
 弁当を受け取り手を合わせ、箸を取り口へと運ぶ。
「あー!」
「え?何ですか?」
「ボクがあ〜んってしたかったのに!」
「…くだらない…」
 七緒自身が先に箸をつけてしまったので、春水は悔しがる。呆れて物も言えないとはこの事だ。春水の思惑を無視して、箸を進める。
「もう…七緒ちゃんてば、つれないんだから…」
 

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