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「でも、たまにはいいかな。ちょっと待ってて」
「はい」
 春水は寝台から降りると、持ち込んできていた風呂敷をあける。
 中から大切そうに何かを取り出し、七緒の元へと持ってくる。
「はい。ちょっと早いけれど、誕生日おめでとう。七緒ちゃん」
「ありがとうございます」
 差し出された包みを受け取り礼を述べると、七緒は丁寧に包みを剥がしていく。

「これは…?」
 謎の黒い物体に七緒は首を傾げ春水を見上げる。
「これはね、プラネタリウムって言って現世で星を見る道具なんだよ」
「それは、望遠鏡ではないですか?」
 春水の説明にますます首を傾げる。
「望遠鏡は本物の星をよく観察するための道具なんだけど、これは偽物の星を作って、見る機械なんだよ。技術開発室にお願いして作って貰ったんだ」
 春水は七緒の手から機械を取り上げて、窓を閉めて室内の明かりを全て落とすと、機械を部屋の中程に置き操作した。

「なんて…すごい…」
 七緒は目を丸くして室内の天井や壁一面に現れた星を見つめる。春水がゆっくりと七緒の隣に座り肩を抱き寄せて寄り添う。
 死神は空を駆ける事ができる。現世の人々よりも遙かに星を良く見れる位置から眺めることができるが、現世にいる間はじっくりと見る時間はないし、瀞霊廷でも仕事に追われじっくりと星を観察する余裕はない。
「これね、肉眼で見れない部分の星もちゃーんと作ってあるんだって」
「すごい…」
 機械がゆっくりと動き星が移動する。
 星々の中にいるというのは、何だか自分と春水だけの世界の中にいるようでもある。

「素敵です…ありがとうございます」
「良かった喜んで貰えて」
 七緒の感動したような声に、春水が安堵の溜息を吐き出す。

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あきゅろす。
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