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「あ…これって…」
 七緒の部屋でくつろいでいた春水は、一冊の本を見つけた。
 少しばかり色あせているが、星空の装丁の本に見覚えがあった。
「物持ちいいなぁ…七緒ちゃんてば…」
 寝台に横たわり本を手にして、頁をめくるとはらりと何かが胸の上に落ちた。
 しおりにしては少し大きめだ。

「あ…短冊か…」
 書き損じたものを挟んだのかと思ったが…。
「……そっか…」
 書かれていた内容に春水は目蓋を落として、瞑目する。
 春水は黙って短冊を戻して本を棚へと戻した。


「あら、隊長いらしたのですね」
「いらしたよ〜」
 七緒が戸を開けて入ってくる。自室に春水がいても驚いていない。
 我が物顔で寝台を占領している春水を見下ろす。
「ご自分の部屋へはお帰りにならないのですか?」
「だってぇ、日付変わったら七緒ちゃんの誕生日でしょう?一緒にお祝いしたいの。ボク」
「…あら、お珍しい」
「そう?」
「手を変え品を変えて、驚かせたい方じゃありませんか?」
「うーん、そればっかりじゃワンパターンでしょ?たまにはって思って」
 七緒が春水を見ることなく部屋の中へ進み、春水は肘枕をして七緒を目で追う。
「そうですか…」
 七緒は手にしていた本を置き、着替える為に帯を解くと、解いた帯を春水の目の上へ置いた。
「見えないよ〜七緒ちゃ〜ん」
「見えないようにしたんです」
 手で帯を持ち上げようとすると七緒は脱いだ袴を春水の顔へと掛ける。
「…七緒ちゃんのいい匂い〜」
「お止めなさい!!」
 春水の行動に思わず七緒が袴を取っ払う。
「全くもう…」
 溜息を吐き出して、死覇装を脱ぎ着物へ着替える。
「お風呂はいろー?汗掻いたでしょう?」
「…そうですね…」
 七緒は素直に頷いた。

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あきゅろす。
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