◇BLEACH if…
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 暖かな、ある日。

 流魂街のとある地区に、恐ろしく場違いな物が通っていた。
 派手な飾りこそ付いていないが、上質な材質から出来ているとわかる籠。担ぎ手二人と、傍を歩く男は紋付袴姿で、刀を二本差している。
 時折籠の中へ声を掛け、道を確認しながら進む。
 住人達は何事かと、囁き合いながら、遠巻きに付いていく。


 住宅地を抜け、やがて、閑散とした場所にでた。
 墓地だった。
 男一人先に入り、場所を確認し、籠を呼び寄せる。
 手を差し伸べ、中から現われたのは、白無垢姿の花嫁だった。
 裾が汚れることも厭わず、男と二、三言葉を交わすと、墓石に手を合わせた。
 どうやら、花嫁の縁者の墓らしい。花嫁は男に深く頭を下げ、笑みを見せた。

 その時だった、獲物を見つけたと、破落戸が群がる。人気の無い墓地は、襲われやすい。その上、花嫁姿はとても目立つ。
「…やれやれ、野暮だねぇ…」
 男が一歩踏み出し、面倒臭そうにボヤク。
「見て解らないかな?花嫁さんの家族に挨拶っていう、大切な儀式に、邪魔しないでくれるかい?」
「うるせぇっ!」
 破落戸が喚きながら、男に刀を振りかざす。
「やるの?やるなら、刀抜くよ?抜くからには殺すよ?できれば、結婚式当日くらいは、殺さずにおきたいんだけどね?」
「…何をっ!」
「…隊長…」
「…そんな顔しなさんな…。花嫁さん」
 縋る花嫁に、男は破落戸に背を向け、微笑を浮かべそっと頬を撫でる。
「…ですが…」
「…やれやれ…仕方がない…。それじゃあ、死んでもらうか…」
 背を向けた男に、隙ありと勘違いした破落戸が襲ってくる。
 刀が届いたと思った時には、男と花嫁の姿はない。振り返ろうとした時には、既に胴が切り離されていた。
 男は左腕で軽々と花嫁を抱えその場から大きく離れていたのだ。

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あきゅろす。
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