◇BLEACH if…
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「やちる姉!」
「なーに?秋君」
「俺と結婚してくれ!!」
 真央霊術院の白地に青い線の入った着物に、青い袴を身に纏った少年が、十一番隊副隊長の草鹿やちるを真っ直ぐに見上げて、頬を赤らめ宣言した。
「ごめんねぇ。秋君とは結婚できないなぁ」
 やちるはふんわりと笑いかけ、少年を見下ろした。
 少年の名は、京楽一秋。八番隊隊長の京楽春水と、副隊長伊勢七緒の間の長男である。先日、学院に幼少ながら入試を突破し、入学したばかりである。親の七光りと陰口をするものもいるが、紛れもなく、少年の実力だった。十番隊隊長日番谷冬獅郎に次ぐ、天才児と噂だ。
 やちるもまた、彼が成長した分だけ、大人の女性へと変化している。落ち着きを見せ、より女性らしくなり、また強さも増していた。
「だって、更木隊長とは結婚しないんだろう?」
「うーん、多分ね…。剣ちゃん、そういうこと無頓着だし。あたしはそれで納得してるし。でも、あたしは剣ちゃんが大好きだし、剣ちゃん以外の男は興味がないんだ」
 やちるは微笑を浮かべながら、真面目に一秋に語る。一秋を子供だと思って侮っているのではなく、一人の男として、やちるもまた一人の女として真剣に語った。
「……そんなの…」
 結婚し幸せに包まれている両親に、父親の親友も結婚し幸せな家庭を育んでいるだけに、一秋は納得できないらしい。好きあって、愛し合っていて、結婚しないのは可笑しいと思っているのだ。一秋には結婚は当り前の選択肢の一つなのだ。


「やちる!」
「あ、剣ちゃん!!」
 名を呼ばれ、やちるは嬉しそうに手を振る。
 一秋はそんなやちるの些細な仕草と表情に、自分の恋は届かないと思い知らされる。
「おう、京楽ン所のガキじゃねぇか。何してたんだ?」
「えへ、秋君にプロポーズされちゃった」
 やちるは隠す事無く報告し、一秋は一瞬青ざめたが、唾を飲み込み、真っ直ぐに剣八を見上げる。
「……プロポーズ?」
「うん。でも、剣ちゃんが好きだから、ってお断りしたよ?」
「……そうか」

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あきゅろす。
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