◇BLEACH if…
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 その日、空は何処までも晴れ渡り、雲一つなく。
 庭は緑が美しく、ふっくらと満開の牡丹の華が鮮やかに咲き乱れていた。


 心臓が早鐘のようになっている。
 掌や背、脇の下にじっとりと嫌な汗が滲んでいるのが解る。
 深呼吸を繰り返し、目を閉じ、気持ちを落ち着かせようと試みる。

「…七緒ちゃん、大丈夫だよ」
 柔らかな温かな声、そっと握られた手に、七緒は目蓋を押し上げ、春水を見上げ微笑を浮かべた。
「……はい…」


 襖の向こうには、京楽家の親族が集められていた。
 この日、七緒は初めて京楽家の親族と顔を合わせ、挨拶をすることとなっていた。これはまだ、結納でもなんでもない、ただの初顔合わせなのだ。
 だが、今日心象を悪くすれば、春水と七緒の結婚は困難なものになることは確かでもあるのだ。
 
「入れ」
 尊大な声が二人を呼んだ。
「はいよ」
 それでも、春水は飄々としたものだ。気楽に返事をし、襖を開ける。


「失礼致します」
 しんと静まりかえった室内に、七緒の凛とした声が響く。
「お初にお目にかかります。伊勢、七緒と申します」
 名を名乗り背を伸ばして、顔を上げた七緒の姿に、一同がどよめいた。
「春水!!」
 その中の一人が、腰を浮かし声を上げた。
「お前!何故自隊の副隊長だと言わぬのだ!」
「何度も言ったでしょう。肩書きには用はないんだって。ボクが選んだ人を認めて欲しい。ただそれだけだって」
 春水は唇を尖らし、胡座を掻いて一同を眺める。七緒は春水の側に座ったまま黙っていた。

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あきゅろす。
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