◇BLEACH if…
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「ふぁ…、剣ちゃん…?」
「……」
 座り込んでしまったやちるは、当然のことながら立っている剣八を、見上げる形になる。濡れた唇は半開きで、口端からは、二人の激しい口付けの跡として、銀糸が顎に掛けて伝い落ちている。頬が上気し髪の色と同じ色になり、瞳も潤んでいる。
「やちる…」
 剣八は優しい目でやちるを見つめ、口端を親指で拭ってやる。
「……どしたの?急に」
 顔に添えられた剣八の大きな手に、己の手を重ね、微笑を浮かべる。
「したくなっただけだ」
「へぇ?それにしては、激しかったよー?」
 剣八が口端を吊り上げ、獰猛な笑みを見せれば、やちるも目を丸くし、大きく口を開けて笑みを見せる。
「ねぇ、ねぇ?どうして?」
「したくなっただけだ、っつったろうが」
 背を向け、やちるの追求から逃れようとする剣八の様子に、やちるは面白そうに、突っ込む。無論剣八が素直に心情を吐露するはずもない。
「ウソだー、剣ちゃんが衝動的になる時って、何かあるんだからっ」
 やちるは元気良く立ち上がり、剣八の背に飛びつく。
「ねー?剣ちゃん。どうしてー?」
「どうしても何も、理由なんざねぇ」
 肩越しに、やちるが覗き込んでくるが、剣八は口端を下げ、不機嫌そうに返す。
 剣八の表情と霊圧の高まりに、辺りにいた花見客がそっと離れて行く。
「剣ちゃんったらー」
 唯一やちるだけが、剣呑とした雰囲気漂う剣八に、平気で接している。
「…押し倒すぞ」
「……」
 剣八の言葉に、やちるは辺りを見渡す。
「いいよー?」
「……」
 やちるの動きと返事に、剣八も辺りを見渡すと、サトザクラの元には二人だけになっていた。
 そして、サトザクラの木は非常に大きく、二人がすっぽりと隠れるだけの幅があった。並木道から見えぬ方向へと歩いていくと、やちるを背から降ろし、幹へと押し付け、再び唇を奪う。

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あきゅろす。
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