◇BLEACH if…
3
 剣八は苦笑いで、やちるの頭を撫でようとして、綺麗に結われた髪に手を止める。手を下ろし、細い顎を摘むと、唇をついばむ。
「…剣ちゃん?」
「酒と料理がこの後あるんだろ?」
「うんっ」



 間もなく、酒と肴が運ばれてきて、やちるの酌で酒を呑み、昼食までの間、やちるの膝枕で庭を眺めながら、他愛のない会話をする。
 昼食は豪華なコース料理で、やや上品すぎて辟易したが、それでも綺麗に平らげてしまった。
 昼食を済ませると店を出て、やちるの案内で、瀞霊廷の外れに足を向けた。



 旧市外跡で人気のない、荒れた場所。
「あたしね」
「ん?」
「どーしても、剣ちゃんの誕生日は誰にも邪魔されたくなかったの」
「何時もそうだろ?」
「何でか解る?」
「さあな」
「剣ちゃんがこの日に生まれて来なかったら、あたしは剣ちゃんに会えなかったから。だから、あたし一人で剣ちゃんにおめでとうとありがとうが言いたかったの」
「…お前の誕生日は?」
「あたしの誕生日は、剣ちゃんと出会って、名前をくれた日。そんな大事な日、絶対邪魔されたくないもんっ!」
「……やれやれ…、ガキの頃からそんな事考えてたのかよ」
「そーだよっ、他はどーでもいいけど譲れないっ」
「…で?今更何で話す気になったんだ?」
「…あたし、剣ちゃんの女になったんだよね?」
「ああ、そうだな」
「これからも、誕生日は二人だけでいて」
 真剣な眼差しで剣八を見上げる。
「ああ?今までそうだったろうが」
「今までは、副官で子供の我儘。これからは、あたしと剣ちゃんの約束なの」
 言われてみれば、今までやちるから『お祝いをするの』と一方的に付き合わされた物だった。邪魔はやちる自らが排除していた。
「…俺は気が利かねぇぞ」
「知ってるよ」
「…しょうがねぇな…」

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