◇BLEACH if…

「そうだねぇ、あたしの草鹿もそうだし」
 二人とも名無しで彷徨っていて、便宜上名乗っているだけで、名字に固執は全くない。やちるの名前は剣八が与えてくれた大切な名前だから手放せないし、剣八も己であるために名乗った名前だ。これは譲れない。
「じゃ、お嫁になるー」
 八千代は嬉しそうに一秋の腕にしがみついた。
「あ、思いついた」
 一秋が笑顔になる。
「更木隊長のこと、親父さんって呼びます。これならいいでしょう?」
「あ、いいんじゃない?で、あたしは?」
「んー、お母さんで」
「おっけー、おっけー」
 堅苦しさが抜けた呼び方に、やちるは親指を突き上げ満足げな表情で頷きを繰り返した。
 


 こうして、両親への報告を済ませると、二人は慌ただしく動くことになってしまった。
 八千代は学院へ報告し、更に休学届を出した。
一秋は現世の記憶が残る黒崎夫妻へと相談し、剣八が退屈しないように、それでいて八千代が満足できるような演出を考え、ドレスのデザインについても相談に乗ってもらったりとする合間に、一秋は当然のことながら死神として仕事もある為、あまりの忙しさに肝心の八千代と過ごす時間が減ってしまい、途中怒らせることまであったりもしたのだった。



さて、結婚式当日。
 二人は春水の計らいで京楽家が所有する敷地にて式が執り行われた。

 雛段を中央に配し八千代が好きな花々で彩られている。
 そこへ、手を取り合って二人が登場した。
 一斉に拍手で迎えられ、八千代は丸く作られた可愛らしいブーケを振り拍手に応じ、一秋はやや緊張した笑顔を見せた。

 雛段へと歩いてくると、集まった一同へと深く頭を下げた。

 八千代は白色に近い桜色の着物風のドレスだ。襟や裾は着物のように重ね合わせているのだが、胸下の帯の位置には帯の変わりに切り返しになっていて、膨らみ始めたお腹を隠すような形になっており、襟元や袖口、裾からは白いフリルがあしらわれている。頭には短くレース仕立てのベールがそっと載っている。
 一秋は濃灰色の紋付袴姿だ。黒ではあまりにいつもの変わり映えがなく、かといって色付きでは八千代のドレスには似合わなかった為、この色に落ち着いたのだった。

 そんなドレスの話を、弓親がすらすらと述べている。そう、司会進行は弓親になったのだ。二人と縁があり、それでいて、話上手で司会進行などできそうな人物は限られている。
 そして、そんな二人にもう一人手を貸してくれたのが…十三番隊隊長の十四郎である。

「コホン…それでは、二人ともその書類に、署名をしてくれたまえ」
 二人は筆を手にして、線の引かれた場所に署名をする。
 十四郎は書類と手にし皆の方へと掲げると、力強い声で告げた。
「これにて、二人の結婚を認めるものとする。皆がその証人だ」
 皆が一斉に拍手をする。
「おめでとう」
「「ありがとうございます」」
 十四郎が書類を二人へと手渡すと、二人は声を揃えて礼を述べて一礼をした。ここで十四郎は退くと、弓親が頷き次の手順を紹介する。
「現世では約束の印として、指輪の交換をするそうです。二人とも、指輪は用意したかい?」
「はい」
 一秋が弓親の言葉に頷き、懐から指輪を取り出す。
 卓に小さな小箱を二つ置き、蓋を開けると美しい光を放つ指輪が現れた。
 二人はお互いに左手の薬指に指輪をつけあうと、笑みを浮かべ皆の方へと向き直った。
「では、誓いのキスを」
 この言葉に女性からは歓声があがり、男性からは冷やかしの声や口笛や指笛があがる。

「……」
 一秋はベールをそっと上げると八千代を真っ直ぐに見た。彼女も真っ直ぐに一秋を見上げる。
 一秋は首を傾け屈みこむと八千代の唇に自分の唇を重ねた。

 その瞬間歓声があがった。

「…ねえ、七緒ちゃん、あれいいねぇ」
「そうですかねぇ?」

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