◇BLEACH if…

 三夏と左陣の時の事を思い出し、大きな溜息を吐きだし首を振る。
「んー?ああ、まあ、八千代も一秋も十一番隊だしな?どこか行くわけでもなし」
「ち、その手があったか」
 剣八の言葉に春水は痛烈な舌打ちをし眉間に皺を寄せる。
「…あなた。まさか今更引き離すおつもり?」
「ん?夏四ちゃんは八番隊へ呼べるよねぇ…」
「卯ノ花隊長が、夏四さんや葉太さんを手放すでしょうか?」
「く…それは…」
 額に手をあて気で悩む春水に、一同は呆れた表情を向けた。
 だが、剣八の言葉に一理ある。
 一秋は望んで十一番隊へ所属しているし、八千代も学院を卒業すれば当然十一番隊所属希望を出すつもりだし、剣八が望めば通る人事だと思われる。結果として娘は遠く離れず、同じ隊。家族ぐるみの付き合いの一秋が相手なので、何処かへ行く恐れもない。嫁にやるというよりも婿を貰う気分なのだから、剣八としてはさほど嫌だと言う感覚はないのだ。
 寧ろ剣八は娘よりも妻のやちるの方への想いが強いので、やちるさえ喜ぶなら大概の事は許せてしまうのだ。

「良かった。それで、できたら式を挙げたいなと思っているのですが」
「ああ?式だあ?面倒臭え」
 本気で嫌そうな口調と眉間に深く刻まれた皺に、一同やはり苦笑いが浮かぶ。
「はい、そうおっしゃるだろうと思いまして、その、立会いだけでいいんです」
「あ?」
 一秋の説明に剣八ばかりでなく、やちるも七緒も春水も首を傾げた。

「えっと、八千代が現世のウェディングドレスみたいなのが着たいって。そんな式が良いって」
「でも、あれだって、両親が色々儀式に参加するのではないの?」
 七緒が現世のことを思い出しながら首を傾げ指摘する。
「あのね、そういうのじゃないのもあるの。あたしも、父ちゃんと母ちゃんが参加できるようなのないかなーって調べたことがあってぇ…それで現世のにいきついたんだけどね?」
 八千代が瞳を煌めかせて説明を始めた。

「本当は父ちゃんに連れられて、一秋の所へ行くってのがあるんだけれど、そういうとこはすっとばして、あたしと一秋が一緒に皆の前へ出て、家族とか、皆の前で結婚しますって宣言して、書類にサインして、指輪の交換して、誓いのキスしておしまいって」
「あー…それくらいなら、できそうだねぇ」
「でしょう?」
 やちるが娘の言葉を頭の中で想像し、自分も剣八も何かするのではなく子供達の式を見守るだけという形式にそれならばと考えた。
「そんなそっけなくって良いのかい?」
「うん、父ちゃんと母ちゃんに見守ってもらえて、結婚したよって解って貰えるだけでいい」
 心配そうな春水に、八千代は笑顔で頷く。
「女の子はもう少し豪勢なのを夢見てるものだと思ったけれど…」
 春水は苦笑いを浮かべる。自分たちや娘の式を思い出しても、何だかんだ言って七緒や三夏が張り切っていたように思うのだ。
「え?だから、ドレス」
 八千代は瞳を煌めかせてうっとりしている。どうやら式そのものよりもドレスが一番の目的のようだ。この辺りは剣八とやちるの娘だなとしみじみ感じられる。
「と、言うことでいかがでしょうか?」
「…まあ、そこまでオメーらで考えてるんなら、いいんじゃねーのか」
 自分の娘だというのに剣八は何処までも他人ごとだ。
「ありがとうございます」
「ありがとー!!」
「と、言うことで、いいかな?」
 一秋は春水と七緒にも窺う。
「まあ、更木君達がそう言うなら…」
「そうですねぇ…」
 春水と七緒は顔を見合わせ苦笑いを浮かべた。
「あ、本家から何か言われるかな?」
「ん〜?いいんじゃないの?何か言ってきたら、十一番隊へ行って直接交渉してこいって、言っとくよ」
 袖の中で腕を組み肩を竦めて笑みを浮かべて見せる。
「あ、やっぱり?俺もそう思ってた。更木隊長を頷かせるだけ説得はどうせできないかなって」
「ま、違いないね」
 春水と一秋の会話に、七緒は溜息交じりで首を振り、八千代は口を開けて驚きの表情だ。
「すごーい、一秋の言ったとおりだー」
「だろ?」
 八千代の様子に、やちるは一秋に任せておけば大丈夫だろうと頷いた。八千代は自分たちに似て考えが足りないところがある。それは自分でも自覚していることだ。
 だが、しっかりものの七緒に似た一秋が側にいて支えてくれている。

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