◇BLEACH if…


 七番隊でも門番へ声を掛け、倉庫へと向かい補充し帳面へと記していく。
「夏四ねーちゃん!」
 三つ子の甥っ子の一人西治が飛び込んできた。
「西治、元気そうだね!」
 抱きついてきた甥っ子を抱き上げる。
「母ちゃんがおやつ食べてって!」
「そっか、ありがとう」
「あれ?じーじは?」
 いつもなら大好きな祖父の春水も一緒にいるはずなのに見当たらないので、きょろきょろと辺りを見渡す。
「今日は、来られなかったの」
「そうなの?」
 しょんぼりとしてしまった甥っ子に夏四は苦笑いを浮かべ頭を撫で慰める。
「後で伝えておくから。きっと来てくれるよ」
「うん!」


 仕事を無事に終えると、素直に私室の方へと向かった。西治は既に先に部屋へと戻っている。
「お疲れ様」
 三夏がおやつを卓へと並べ、淹れたての茶を置いて行く。
「今日はお父様が珍しく帰ったそうね?」
「ん、今頃母さまに慰めてもらってると思うわ」
 姉の確認の言葉に夏四はそっけなく頷く。
「あらあら、本当に珍しいこと」
「…何かあったのか?」
 左陣が首を傾げる。義妹が言葉を濁すことなどかなり珍しいことだからだ。
「ん?ん〜あったと言えばあった」
 更に言葉を濁す夏四に、左陣と三夏が顔を見合わせるが程無く意味が解る事になった。

「こっちだよ〜!」
 西造が鉄左衛門を連れて姿を見せた。どうやら西造が呼びに行っていたらしい。
「おお、すまんのう」
「鉄様!!」
「おう、緑。珍しいのう、手伝いにきたいうとったが…」
「はい、鉄様にお会いしたくって」
 喜びに瞳を輝かせ父や兄の存在など忘れ抱きつかんばかりの様子に、十四郎は目を丸くしていた。
「ん?う、浮竹隊長もご一緒でしたか!あれ?京楽隊長は?」
 十四郎の存在に気が付き慌てた鉄左衛門だが、直ぐにいつも騒ぎ立てるもう一人が見当たらないことに気が付いた。
「うむ、何やら用事があったようでな」
「そうでしたか」
 鉄左衛門が腰を落ち着けた所は無意識に緑の隣だった。
 そして十四郎はある事に気が付いた。

 今までならば狛村家の三つ子達は春水や十四郎をはじめ、皆の膝の上に乗りたがり移動を繰り返すのだが、今日は珍しく父親と母親の膝の上に落ち着き、鉄左衛門の膝にすら乗っていないのだ。どうやら緑がいる為に遠慮しているようで、南槻が緑を見て、満足そうに頷きこれでいいのかと母親を見上げている。
 小さな子供達までもが二人を応援しているようで、十四郎は打ちのめされてしまった。何時もならば気付かないことが今日は随分良く見えるのは、先ほどの息子達の会話の影響だろう。

 そして二人とも会話をしているものの、直ぐに視線がそれぞれの恋人の方へと向かってしまっている。

 そんな皆の様子を見ていた十四郎は居たたまれない気持ちだけでなく、愛を分かち合う相手に無性に会いたくなった。
「……」
 春水もこんな気持ちだったのだろうかと苦笑いが込み上げる。
「すまん。用事を思い出した」
 十四郎は一言詫び、そそくさと七番隊を後にし四番隊へと向かった。


「珍しいのう、浮竹隊長が…」
「むしろ、成長したわ…」
 鉄左衛門が驚けば緑がしみじみと呟く。
「それは言える」
 葉太も頷く。子供が父親に対していう台詞でないことは皆承知しているのだが、こと恋愛に関しては奥手という訳でもないのに、妙に鈍く、それでいて真っすぐなのでどちらかというと子供のようなと形容したくなってしまうのだ。それゆえに出てしまう言葉であると言える。


 一休みを終えると、葉太と夏四は四番隊へと帰って行った。
 この日休日の緑は当然七番隊に居残った。仕事の邪魔はしないという約束で側にいることを許された。


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