◇BLEACH if…

「はい。この後七番隊に行くので」
「はは〜ん…成程…十三番隊はまだなんだね?」
 春水は一瞬にして三人の考えが解ったようだ。これは面白いことになりそうだと笑顔になる。
「よし、そう言うことなら」
「父さま、邪魔しないでよ」
「え?何のことかなぁ?」
 夏四が睨み上げて父親を諭そうとするが、視線を逸らされ飄々とかわされてしまう。
「全くもう…」
 こうなってはどうしようもないと大きな溜息を吐きだしながらも、仕事を済ませるべく倉庫へと向かった。


「えらいねぇ。こういう細々としたことを丁寧にやってるんだねぇ」
 三人の仕事ぶりを春水が頷きながら褒める。
「いざなくなって困るのは皆だから」
「うん、そこがちゃんと解っててえらいよ」
 春水は大きな手で娘の頭を撫でる。地味な作業は嫌われる傾向にあるし、嫌がって手を抜く者も出てくる。地味な作業が何故必要かを理解し手を抜かずに行い続ける行為は中々大変なことなのだ。娘達が正しく理解し仕事を熱心にしていることが誇らしく嬉しい。
「……」
 久しぶりの子供扱いの行為に思わず頬が赤らむ。こういう事を自然にやってのけるのが春水なのだ。
「もう、邪魔しないでっ」
「はいはい」
 照れ隠しに文句を言っても春水は笑顔で頷くだけだ。



「さてと、次は十三番隊へ行こうか」
「うん」
 春水は勝手に着いてくる。

 十三番隊でも門番へ声を掛けて倉庫へと向かった。
「あら」
「あ、虎徹三席」
「久しぶりね。今日は緑ちゃんも一緒なんだ?」
 清音が笑顔で迎える。何かを取りに来た所だったようで手に何か持っている。
「丁度良かった。これ、残り一つみたい。よろしくね」
「はい」
 葉太と緑にとってはお姉さん的存在でもあるので、笑顔で和やかなやり取りになる。
「今日、父の具合はどうですか?」
「今日は調子良いみたいよ」
 小柄で元気な清音は姉の勇音とは一見似ていないものの、こういった時の表情など姉妹だなと思わせる。

 そして、清音の言葉通りに直ぐに十四郎が姿を見せた。
「葉太!緑も一緒だなんて珍しいな」
 子供達が死神になってから揃っている場面は中々見ることがないだけに十四郎は嬉しそうだ。
「元気そうだな」
「私たちより自分の心配して。でも、虎徹三席もおっしゃってたけど、今日は調子良さそう、顔色いいね」
 こういう所は母譲りなのだろう。一目父を見るなり様子を気にしてしまう。
「やれやれ。子供に心配されてしまうとはな」
 それでも十四郎は嬉しそうに緑を抱きしめ、緑も素直に抱き返した。葉太は仕事柄顔を合わせることが多いが、緑とは少ないので尚更である。
 

「…夏四ちゃんもあーやって抱き返してくれたらいいのに。昔はぎゅっと返してくれたよ?」
「それは父さまが悪いの。あれくらいソフトに、ハグぐらいで終わればいいのに、力いっぱい抱きしめて離れないのがダメ」
 春水が羨ましそうに浮竹父娘のやり取りを見て娘に訴えると、夏四は眉間に皺を寄せて父を睨み上げ説明をする。
「だってぇ、久し振りなんだもん。可愛い娘を離したくないもんだよ?」
「…そのうち、夏七も南槻も『おヒゲ、イタイからイヤっ!』て言うようになるんだから」
 春水が大変可愛がっている末娘と孫娘の名前を挙げると、春水の表情が一変して悲しそうな様子を見せた。
「…………夏四ちゃん、今日は一段とつれないねぇ…どうも…」
「ん?世間一般的な父親像を目の当たりにした気分だから」
「えー!浮竹を一般的!?夏四ちゃん!それは違う、絶対違う!!」
 娘の発言を力一杯春水は否定するが、夏四は気分を害した様子を見せず溜息交じりに返した。

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