◇BLEACH if…
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「俺、きっと八千代に会う為に、ここにいたんだ」
 男が真剣な眼差しで少女に語る。
「…でも…」
 八千代と呼ばれた少女は、男の眼差しから逃れるようにうなだれた。
「…ここな、昔、告白した場所なんだ」
「そんな話っ…」
 男の言葉に、少女は聞きたくないと首を振る。
「聞いてくれ。俺は昔、君のお母さんにプロポーズした。けど、今ここに八千代がいて違うと解った。俺は何年も前にお前に向かって、プロポーズしてたんだって解ったんだ」
 男は泣きだしそうな八千代に向かって、覗き込みながら、口元には微笑を浮かべながら蕩々と語るが、八千代は恥ずかしくなり、更に俯いてしまう。
「…一秋…臭いよ…そんなの…聞いてるこっちが恥ずい…」
「…許せよ、これは親父譲りだ。な、八千代…返事は?」
 男の名は京楽一秋、その昔八千代の母やちるに、プロポーズしたことは周知の事実で、一秋が十一番隊に所属しているのも未練からだと噂があった。
 八千代は母には叶わないと知りつつも、最強の父に臆する事無く立ち向かう一秋に、何時しか恋心を抱き初めていた。
 学院への入学が決まり、暫らく十一番隊の皆に会えなくなる事から、振られる事を覚悟して一秋を呼び出し告白しようとした所、逆に告白されてしまったのだった。
「…父ちゃんに、まだ一太刀決めたことないくせに…」 
 思いがけず両想いと解り、嬉しくはあるが、恥ずかしさが勝りつい憎まれ口になる。
「…じゃ、義弟見習って、更木隊長に許可とったら良いか?」
「……義弟って…」
 一秋の義弟と言えば、今は一人しかいない。三夏と結婚した左陣だけだ。
「お父さん、交際をお許し下さいって」
「……莫迦っもうっ」
「決まりな。返事その時にくれよ」
 八千代はもはや、一秋に憎まれ口しか返せなかった。

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