◇BLEACH if…
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「はい、どうぞ、あ〜ん」
「い、いや、それは…」
 この日、滅多に休みの取れない左陣の元へ三夏が弁当を持って、昼休みに七番隊を尋ねて来たのだ。

 三夏としては初めて左陣の為に作った弁当を、一度食べさせたいと思ったので、先刻のやりとりになったのだった。
 だが、左陣は照れ臭いし何より年若い娘に食べさせてもらう行為に、激しく抵抗がある。
「自分で食えるから…」
「最初の一口だけですから」
 やんわりと断るが、三夏も負けていない。笑顔で箸を掲げる。
 ちなみに、三夏と左陣の身長差がかなりあるので、三夏は左陣の膝の上に陣取っていたりする。
「…三夏…」
「はい、あ〜ん」
「……」
「恥ずかしい事じゃないですよ?お父様、よくお母様にしてもらってますから」
「…そんなことをしているのか…」
「はい」
 笑顔で頷く三夏に罪はない。左陣は心の中で春水を罵り、溜め息を一つ吐いて渋々口を開けた。
「……あ〜…」
「きゃー!コマコマがみかっち食べようとしてる!」
 運悪く、十一番隊の副隊長が現われ、口を開けたところを見られてしまった。左陣の口は大きい、確かに三夏を食べようとしているように見えなくもなかった。
「あ、草鹿副隊長、今日は」
「……」
「いいなぁ、みかっち手作りのお弁当?あ、コマコマ続きどーぞ?鉄ちゃ〜ん!書類〜」
 やちるは勝手に状況分析をして、鉄左衛門を呼び出す。
「おう、お嬢」
 元十一番隊所属という影響力は今尚濃く、鉄左衛門も慣れた様子でやちるの呼びかけに応じて顔を見せる。
「いやん、鉄ちゃん、奥様って言ってって言ってるじゃない」
「いやぁこればっかりは何年経っても慣れんのう」
 やちるが剣八と結婚してかなりの年月が経つというのに、鉄左衛門は昔と変わらぬ呼び方をする。やちるが皆を未だにアダ名で呼ぶように、鉄左衛門も長年の習慣は抜けないらしい。
「…左陣様?」
 動きの完全に止まった左陣に、三夏は怪訝そうに首を傾げ見上げた。
「………鉄左衛門…」
「はっ!」
「……草鹿を送っていけ…」
「はっ!さ、お嬢いきやしょう」
 左陣の低く感情の篭らぬ声に、鉄左衛門は背筋を伸ばして命を受け、やちるを促す。

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