七兎様より 「おちびさんってさぁ…大きくなったよね。」 しみじみ。 本当にしみじみと言うもんだから、いつものように応戦する気も起きずに肩を竦ませた。 そりゃオレだってもうハタチ、そうそうちっさいままでいられるか。 「お前こそ、縮んだンじゃねぇ?」 「まさか。」 からかうように笑って、本を机に置いてからベッドに転がるエンヴィーの横にぼすっと腰を降ろす。 「いくらボクが"こっちの身体"使って普通に年とってるからって、縮むには早いよ。」 そう言うと、口を尖らせる。 はいはい、と言ってオレは拗ねたような頭をわしわしと撫でながら、猫みたいにすりよる様に苦笑した。 ミュンヘン郊外の小さなアパートでの会話。 □DropCandy!□ エンヴィーはあの日、門に錬成され全て、持っていかれた。 けど、オレは遺物が何もないまま、あの憎たらしい笑顔がもうみれないなんて信じられなくて、アルフォンスと生活をしながらその片隅でずっと、こっちの世界にいるエンヴィーを探していたんだ。 オレがこっちに来たとき、アルがこっちに来たとき、いつもいつもこっちにはそっくりな人間がいた。しかも、アルの話を聞けば微妙にこちらのそっくりさんとは精神がリンクすることがあるらしい。 ならば、 投影だろうとなんだろうとオレはあいつにもう一度会いたくて、別人でいいから、傍にいたいと思った。それはそれは、ハイデリヒのように、辛い思いをさせるとしても、オレの、多大なるエゴにすぎなくても。 カミサマ、ごめんなさい。 そしてオレ達は二度目の出会いを果たす。 通い詰めた図書館で、見慣れた黒い髪を視界の端に映した。 そして、思わず名前を叫んだ。 怪訝そうに振り返った顔、懸命に言い訳を探すオレに対して最終的に苦笑ひとつで頭を撫でてくれた手、住んでいる場所が近いこと、時間をかけて友人まで距離を詰めたこと、それからそれから、ある日 「ボクね、おちびさんに夢で会ったことがあるよ。」 まったく同じ顔をした別人にそう言われて、ぼろぼろに泣いた。 ああ、やっぱり、オレの仮説は間違っちゃいなかった。 その日を境に、エンヴィーは少しずつ記憶を、"取り戻して"いった。なんだかこちらの世界での本来の彼が消えていくようで、心の片隅が傷んだ。それでも喜びのほうがオレの心境を満たしていく割合のが多くて、とんでもない最低な人間だと自分を罵った。罵って、罵って、見ないようにした。 けど、エンヴィーは言う。 「あのね、ボクはこっちの人間だっていう証拠が存在しないんだよ。」 そもそも、自分がこちらにもう一人存在するというなら、そうだというのならあの本来の姿で存在するはずだと、君と同じ金目金髪の青年姿で。それなのに、今此処にいる自分は君と過ごしていた時の姿そのままで、身体の構成、性質すべて人間だと。 「ってことはさ、素人考えだけど…さらにはすごく都合のいい解釈だけどさ、」 あの日持っていかれたのは、自分たちの"罪"ではないか、と 人間が生まれ落ちたときから所有する大罪を、能力を、そして第1の生とその証を、持っていかれたのではないか。 その仮説に、救われた。 例え真実が違ったとしても、それでいいじゃないかと思った。オレはともかく、こいつの何百年という償いが報われたんだと、それはそれは、祝福すべきことだ、そしてこちらのどこかにいる本当のアイツにも申し訳が立つ、だって だって このエンヴィーは、あちらのエンヴィーと同じなんだから。 そういった経緯を経て、結局ハイデリヒと住んでいたアパートに帰ってきたオレは、そこにエンヴィーもアルも抱え込んで、地道に声をかけてもらった大学で研究の手伝いをしながら三人で暮らしている。アルはオレのいる大学に入り、勉学に励んでいるようだ。近々もう少し大学の側に引っ越しをしたいらしくて、部屋には荷物が散らばっている。 大分落ち着いてきた、という台詞がふさわしいそんな中で、冒頭に戻るわけだ。 「縮んだ。」 「縮まない。」 「年取った。」 「それはおちびさんのほうだよ。」 「お前のが今じゃちびじゃねーか。」 「おちびさんはおちびさんだよ。」 「成長したっつの。」 「へぇ?」 「証明してやろうか。」 「してみなよ。」 不毛な言い争いが続く、お互い口元はにやけたままだ。 段々おかしくなってきて、けらけらと二人で笑い始める。 ひとしきり笑った後、転がったままのエンヴィーに上からキスをした。反対側からだから、唇の当たるところがいつもと違って、変な感じがしたのだけど、それでも甘いことに変わりは無かった。 「…っ、ん。」 向かいあって合わさる舌と舌、ざらざら。 下唇を軽く噛んで、唇を放す。 「…おちびさん顔赤い。」 「お前のが色白いから、赤いのが目立つ。」 上体を起こしたエンヴィーが小さく笑って擦り寄ってきて、それを抱き締めた。 とくとく。 左右で呼応するように心臓が鳴る。 同じ物を使ってる安いシャンプーの香りが髪から鼻に伝わった、どうしよう、どうしよう、こんなに幸せになってオレはどうしたらいいんだろう。 朝起きても、昼に本を読んでいても、夜に帰ってきても、いつもコイツがいる。 優しい手も、言葉も、全部手の届く場所にある。 きっとオレは死んだら地獄に堕ちるんだ。 そう思える程の安心感と、 愛しさ。 とさっ 「………おちびさ ん?」 なんだろうなんだろうなんだろう、気付いたら反転した世界に思わず目を見開いた。 あっれ、あの天井染みがある。ヒビも入ってるとかそろそろやばいんじゃ、 いやいや、そうでなくて。 そう、なんだか戯れあってて笑えてきたから、キスをして、そうだ、おちびさんがなんだか可愛すぎるから押し倒してやろうかなって思ったら、 「…エンヴィー。」 天井が見えて 「あ、あれ?」 「証明してやる、つったろ?」 やたら愉しげなおちびさんの笑顔が、って、あ、あれええええ? 「ちょ、ちょっとタンマ!!」 「タンマなし。」 「あっ、…ふ、ま、待って待って!!」 「だぁめ。」 「んゃっ…ぁ…」 手を這わせれば身体が跳ねる、肌に吸い付けば嬌声があがる。 白いシーツに転がる白い身体、赤みがかかって扇情的。 そろそろ薄暗い室内で、デスクランプだけがオレンジ色にぼんやり光る。 一度既に汚れた左手を、エンヴィーが呑み込むのに時間は掛からなかった。 初めて触れるソコは熱くて、あつくて、指先が溶けるんじゃないかと思った。 なんだか慣れたような反応に、経験があるのかと尋ねたら、そりゃ伊達に長生きしてないんだから、と泣きそうな声で言われて少しむっとする。 「…っやぁ、だから…そ、んな数百年も前の…ひぅっ…」 「判ってる。」 「う、そ…ぉ…」 嘘じゃない。 嘘じゃないけどオレだって人の子だから、嫉妬くらいする。 あっちにいたときは想像もしなかった、この彼の痴態を、そうか、みるのはオレが初めてじゃないんだ。 「…なんか、ずるぃ…」 ぐり、と指を中で回すと甲高い悲鳴が、ひくひくと絡みつく肉壁に指の腹を擦り付ける。 「だって、そう言われても…んくっ…も、だめ…おちびさ、はなして?」 ボクがきもちよくさせてあげるから、と懇願する悲痛な台詞を聞き流して指を引き抜いたオレはエンヴィーの腰をしっかり抱えてオレ自身を擦り付けた。 「オレがしてやるからvだから、もうさ、」 ふるりと肉付きのよろしくない白い身体が震える。 お願い教えて、身体で教えて、もう一度 「これからはオレ以外とこんなことすんなよ。」 「っぁ…おちびと会ってから、してな……ーッあぁあ…!!」 そして額に口付けをして、 + 「おちびさん一体どういう心境の変化?」 「べつに」 「さっきからそればっかり!」 「べっつに」 「もう!」 二人して事後処理もせずに汚れたシーツの上に転がる。 まさかこの子がこう成長するとは思わなかった。 駄目だ、久々すぎて腰が痛い。おちびさんもいつもこうなんだろうか、それならもう少し加減をしてあげたほうがいいのかもしれない。 「…嫌だった?」 「……ッ!!」 あぁ、もう、そんな目で見ないでよ。 どうしてこの目は輝きを増すばかりなんだろう、星と一緒で、ボクの視界に入ったと同時に尽きてしまうものだとばかり思っていたのに。 「…おちびさん。」 「……え。」 何処にいても 愛しいよ。 過去なんてどうでもいいんだ。 今が好き、今しかいらない、それと、これから二人で造る未来だけ。 「ひっくり返させて貰うからね♪」 「っ、わ!!ちょ、ちょっとタンマ!!!」 「だぁめv」 keep me forever fin ++++++++++ 攻 め お チ ビ ! ダメだ、おチビさんが素敵過ぎる・・・えんびが可愛すぎる・・・! そっか、シャンバラで毎日いちゃらぶ生活を送っているのですなv 萌文ありがとうございました!&3000hitおめでとございましたv |