かなしい恋 グッ、指先に力を込める。 「かッ、は…っ」 食い込む爪、漏れる嗚咽、跳ねる躯、暴れる手足 無駄だよ、どれだけ暴れてもボクの力に適う訳がない。 「暴れないで」 じっとして、すぐに済むから もう声にならない擦れた音が漏れた。 蒼白な顔、最後の力を込める。 『 な ん で 』 口だけが動いて、堕ちた。 ピクリとも動かない躯を漸く解放する。 ふと、頬に光る筋に気付いた。 なんだ、泣いていたのか。 ポタ え ポタタ 違う、泣いているのは 「…っく、」 ボクの方。 涙腺から零れた水が頬に落ちて伝い、幾つもの筋を作っている。 大丈夫大丈夫、本来在るべき関係に戻るだけ。 目が覚めれば自分の事など忘れて、今度は殺し合うことが出来る。 それだけ、ただそれだけなのに涙が、嗚咽が止まらない。 「バイバイ…エドワード」 いくら抑えようとも抑えきれない涙、せめて嗚咽だけでも噛み殺して窓から跳んだ。 光さえも届かない深い暗い、漆黒の闇の世界へ。 これが悲しい、哀しい恋の結末。 10/2/20 [*前][#次] |