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神に捧げるクリスマス
−ジングルベル♪−
−ジングルベル♪−
−鈴が鳴る♪−




またやってきたこの季節。
毎年毎年喧しくうざったい季節。

クリスマス本番の24日、こんな日は引き籠もっていたいと言うのに何の嫌がらせかお父様から仕事を与えられた。
勿論渋ったけれども今日中にやってしまえとの命令。


重い腰を上げ渋々出掛けてオシゴトを終えたのはすっかり陽も暮れた頃。


其処らかしこに目障りなイルミネーション、家族連れや恋人たちの楽しげな耳障りな声、家々から漏れる暖かいオレンジ色の光、どれもこれもが勘に障って苛々が治まらない。

何故人間と言う下等生物はこんなにも欝陶しいのか。
擦れ違う人の群れ…うざいうざいうざいうざい。
いっそ殺してしまおうか。
クリスマスには赤い服着たジジィがくるんだろ?
赤い服、着せてやるよ。



など思いながら歩いていたら、玩具屋なのだろうちょっと寂れたこの店もちらほら家族連れが見えた。
そんな店の壁に寄り掛かって一息つく。

心境は変わらず荒んだまま。


「…みんな死んじまえばいいのに」
「なんで?」

突然聞こえた甲高い声。
弾かれるように音のした方を向いた。しかし誰もいない。

「ねぇそんなかっこうでさむくないの?」

またも声。どうやら音の発生源は随分足元らしく確認しようと視線を下げた。

其処に居たのは赤いコートにマフラー、帽子に手袋をはめた小さな人間の子供。
何枚も重ねられた防寒着に包まれてもこもこしている。

「…なんだガキか。今機嫌が悪いんだ、さっさと消えなきゃ殺すよ?」

そう言って睨みを効かせる。
氷のように冷えた視線、これで大抵のガキ、いや人間は逃げていく。
けれどそのガキは怯むどころかニコニコ笑って一歩近付いてきやがった。

「お母さんがいってた、きょうはしあわせな日なんだって!」
「だから何」
「だから!えっと…」


子供は何かを伝えようと手を広げてばたつかせた。
けどオレにそれを読み取る意志はこれっぽっちもない。
伝わらないとわかったのか次第に手は下がり頭も下がり俯いてしまった。

「いったい何がしたいわけ?あんたが消えないならオレが消えるよ、じゃあね」
「まって!」

ぐっ

いい加減面倒になって来た。さっさと帰ろうと踵を返したところで裾を掴まれてしまった。
鬱陶しいガキ、苛々が積もる。

「なんだよ鬱陶し…」
「はいこれ!」

もう殺してしまおうかと振り向いた目の前に赤と青の小さな包み紙が2つ、短い腕を目一杯伸ばして赤いふっくらとした手の平に乗せてあった。

「…。何、これ」
「あげるチョコレート!甘いもの食べるとしあわせになれるんだって!」

拍子抜け。

「…ありがと」
「どういたしまして!あ、こっちもあげるっ」

にこりと笑ったガキ、何やらごそごそと反対側のポケットを漁り出した。

さっさと振り払ってしまえばいいものの、らしくも無くそこから何が出てくるのか少し、期待してしまった。

「あめもやる!」

出てきたのはぐるぐる渦巻きの小さなペロペロキャンディ。
それをボクの掌にねじ込むように握らせてまたにこりと笑った。

「これ食べてにーちゃんもしあわせになれよ?」
「…。」

しあわせ…ってなんだろう。



「エドー!エドワード、行くわよー!」
「お母さん!」

少し離れた所から母親が子供を呼ぶ声がした。
すると反応したのはこの鬱陶しいガキ。

「じゃあね、にーちゃ…あれ?」


子供が振り向いた頃にはもうそこはまるで最初から誰も居なかったかと思える程にシンと静まっていた。




玩具屋の屋根の上、両腕に子供を連れた母親の影を見送った。

カサ…

押し付けられた包みを開いて一粒口に放り込んでみた。

「甘い…」

カカオの香りとミルクの甘味が口一杯に広がってなんだが暖かいものを感じた。
柄にもない、そう思いながら飴も咥えた。ピンクのぐるぐる、いちご味。


「…エドワード、か」





××××××


「メリークリスマスおチビさん!」


クリスマスイブ、今夜もまた家主の許可なく窓からの侵入者。
いつもと違うのは微妙なサンタのコスプレをしていることと、手に真っ赤なリボンで飾られた白い袋が握られていること。

「またお前か、エンヴィー」
「あ、ひどーい。クリスマスだからおチビさんと過ごそうと思ってきたのにぃ」

クリスマスだからって関係ないじゃないか、いつもいつも気紛れに現れやがって…!

「ちゃんとプレゼントも持って来たんだよ?」

そう言って満面の笑みで渡された白い袋。
開けてみろとの熱い視線に仕方なくリボンを解いた。
袋の中には大量のチョコレートと飴と、それらに埋もれてピンク色の小さな箱。

お菓子の中から箱を発掘して開けてみた。
ふと隣を見るとキラキラと瞳を輝かせて反応を待つ、ちょっと殴りたくなる顔。
衝動を抑えて中を見た。
中央の台座にちょんと置かれた二枚のシンプルなプレートには鎖が二つ。

「これ…」
「ペアネックレス!これならいつでもつけてられるよね?」

嬉々としてあーだこーだ語るエンヴィー。その一生懸命な仕草につい笑みが零れてしまう。

「でしょ、おチビさん!…おチビさん?」
「ん?あぁ、ばーか」
「どして!?」

涙ぐんで抗議を始めたエンヴィー、そんな馬鹿なところも可愛いと思ってしまうオレも相当な馬鹿に違いない。


ぎゃんぎゃん煩いエンヴィーを流しつつ、チョコレートを一粒。
そこでふと思い出した。
確か去年のクリスマスもこんなプレゼントをされたような気がする。


「なぁエンヴィー。確か去年もチョコと飴くれたよな?」
「うん♪」
「なんでだ?」
「んー…それはねぇ」

何か理由があるのか、それともただ自分が好きだからと入れているのか、なんとなく気になって。
続く言葉を待った。


「甘いもの食べるとしあわせになるんだよ、エドワード」
「っ!?」


まさかここで名前で呼ばれるとは思わなかった。一気に頬が熱くなるのを感じる。
相変わらずへらへら笑っているこいつがムカつく…っ

「あはは、おチビさん真っ赤ー♪」
「…っ、エンヴィー覚悟しやがれーっ」






いつかキミが言ったことは本当だったよ。
甘いものを食べるとしあわせになる、ホントその通り。
ねぇエドワード、キミはしあわせ?




×××××


某所で神と尊敬する方からいただきましたキリリク・甘いエンエド!
時期が時期なのでクリスマスネタにしてみました(´∀`)
しかし「甘い?エンエド?」になってしまった…orz

ごめんなさい、ネタが思いつかない時にFAの子エドは可愛すぎた…!(←)

なんかもう突っ込みどころが多すぎて申し訳ないorz
とりあえず一番突っ込んでやりたいのはエンヴィーさん、うざいなら町中行くなよw

しかし彼は究極のツンデレ(←)だから文句垂れながらもついつい行っちゃうんでしょうね、なんだかんだで羨ましいし自分も混ざりたいって気持ちがあるんだよ(←)


ホントは子エドに
「今日はサンタさんがきてくれるから!」
「にーちゃんさむそうだからこれ(マフラー)あげる」
とか言わせたかったけどうちの力量じゃこれが限界でしてどこにも入れることが出来なかった…orz
てか子供を書こうと思ったら「!」をいつも以上に多く使ってしまってなんだか悔しい('・ω・`)



09/12/17

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